1998 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白キナーゼの標的としての受容体とシグナルのクロストーク
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10169240
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
福井 裕行 徳島大学, 薬学部, 教授 (90112052)
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Keywords | ヒスタミン / ヒスタミンH_1受容体 / 受容体脱感作 / 蛋白キナーゼC / 受容体リン酸化 / 部位特異的変異受容体 |
Research Abstract |
受容体の過度の刺激により多くの受容体情報伝達は抑制される.この抑制は受容体発現細胞の保護機構だと考えられている.ヒスタミンH_1受容体においてもヒスタミン刺激,或いは,蛋白キナーゼC(PKC)の活性化により受容体情報伝達の抑制が引き起こされる.その抑制機構には受容体リン酸化が関与すると考えられる.ヒトのヒスタミンンH_1受容体の細胞内領域には多くのPKCによるリン酸化可能部位が同定された.ヒト・ヒスタミンH_1受容体細胞内領域にに相当する合成ペプチドのPKCによるリン酸化を調べたところ,第3細胞内領域のセリン(396)残基,セリン(398)残基,C末端領域のスレオニン(478)残基がリン酸化された.そこで,ヒト・ヒスタミンH_1受容体cDNAの遺伝子改変を行い,上記のセリン,スレオニン残基をアラニン残基に置換した部位特異的変異ヒスタミンH_1受容体(S396A H_1 R,S398A H_1 R,S396A/S398A H_1 R,T478A H_1 R)をチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)に発現させ,PKCの活性化によるヒスタミンH_1受容体脱感作を調べた.PKCの活性化によりS396A H_1 RおよびT478A H_1 Rは脱感作が引き起こされたが,S398A H_1 RおよびS396A/S398A H_1 Rには脱感作が僅かしか起こらなかった.正常およびS396A H_1 Rは脱感作されるとヒスタミンによるイノシトールリン酸蓄積におけるEC_<50>値が一桁増加し,PKC阻害薬によりその増加が抑制された.S398AH_1 RおよびS396A/S398A H_1 Rにはそのような変化はなかった.正常および変異ヒスタミンH_1受容体共にPKCを活性化してもヒスタミンに対する親和性に変化はなかった.以上の結果より,PKCによるヒスタミンH_1受容体脱感作機構は受容体第3細胞内領域のセリン(398)のリン酸化であることが明らかとなった.
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Research Products
(11 results)
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[Publications] Ohuchi,Y.: "His tamine-induced calcium mobilization in single cultured cells expressing his tamine H_1 receptors:A relationship between its sensitivity and the density of H_1 receptors." Int.J.Mol.Med.1. 355-360 (1998)
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[Publications] Nonaka,H.: "Unique binding pocket for KW-4679 in the histamine H_1 receptor." Eur.J.Pharmacol.345. 111-117 (1998)
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[Publications] Kinnunen,A.: "In situ detection of H_1-receptor mRNA and absence of apoptosis in the transient histamine system of the embryonic rat brain." J.Comp.Neurol.394. 127-137 (1998)
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[Publications] Lintunen,M.: "Postnatal expression of H_1-receptor mRNA in the rat brain:correlation to L-histidine decarboxylase expression and local upregulation in limbic seizures." Eur.J.Neurosci.10. 2287-2301 (1998)
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[Publications] Fujimoto,K.: "Identification of protein kinase C phosphorylation sites involved in phorbol ester-induced desensitization of the histamine H_1 receptor." Mol.Pharmacol.(in press). (1999)
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[Publications] 福井裕行: "ヒスタミンH_1受容体の構造と機能,「第7回痒みシンポジウム記録集」" メディカルジャーナル社, 4 (1998)
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[Publications] 福井裕行: "ヒスタミンH_1受容体のリガンド認識機構,「脳機能の解明」" 赤池紀扶,東英穂,藤原道弘,小暮久也 編(九州大学出版会), 7 (1998)
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[Publications] 福井裕行: "ヒスタミンの受容体の分子生物学,「検証・抗ヒスタミン薬」" 永井博弌,黒沢元博 編(スタンダード・マッキンタイヤ), 5 (1998)
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[Publications] 福井裕行: "ヒスタミンH_1受容体の分子レベルの研究,「臨床薬理の進歩」第19巻" 臨床薬理研究振興財団, 13 (1998)
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[Publications] 福井裕行: "ヒスタミン受容体,「生体の科学,神経系に作用する薬物マニュアル」" 伊藤正男,石川春律,野々村禎昭,藤田道也 編(医学書院), 4 (1998)
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[Publications] 渡辺建彦: "ヒスタミン受容体,「薬物受容体」" 高柳一成 編(南山堂), 14 (1998)