2000 Fiscal Year Annual Research Report
海洋生態系の環境変動への応答と浮魚類の卓越種交替機構の解明(GLOBEC)
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10306012
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Research Institution | Ocean Research Institute, University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉本 隆成 東京大学, 海洋研究所, 教授 (40004428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 裕之 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (70190478)
渡辺 良朗 東京大学, 海洋研究所, 教授 (90280958)
寺崎 誠 東京大学, 海洋研究所, 教授 (20111586)
木村 伸吾 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (90202043)
小松 輝久 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (60215390)
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Keywords | 海洋生態学 / 地球環境変動 / 動物プランクトン / 食物網 / 浮魚資源変動 / 卓越種交替 |
Research Abstract |
12年度は、野外調査と室内実験による諸素過程を解明する作業を続けると同時に、研究課題に対する総合考察を行った。(1)中田は、黒潮流路の大蛇行は上流で産卵されたマイワシ仔魚の遠州灘への補給と生残を促すが、カタクチイワシにとっては、沿岸水が滞留しやすい非大蛇行流路時の方が餌の利用条件が良くなるために加入が良いことを、水温と透明度の歴史的資料の解析から示した。渡辺は、黒潮親潮移行域で採集されたカタクチイワシ稚魚の耳石と胃内容物を分析し、この時期の水温と餌料が、成長速度と変態時期の変化を通して、加入率の変化に重要な影饗を及ぼすことを示した。寺崎は、小型浮魚類仔魚の捕食者であるヤムシの日周鉛直移動と摂餌の実態について、日本海で採取したサンプルを用いて解析した。(2)小松は、マイワシ・カタクチイワシ資源の多変量解析を行う一方、親潮前線が北退、黒潮前線が南に停滞した時に親潮域の動物プランクトン量が高水準となり、黒潮域ではその逆になることを示した。杉本と木村は、黒潮親潮移行域における4月と5月の平均的なクロロフィル濃度は、マイワシ資源の加入が良かった1970〜1980年代全般にわたって高かったが、6月の濃度は1970年代後半〜1980年代前半にのみに高かったことを示した。これは、親潮水域の南下拡大とも良く対応し、かつ春季ブルーミングのピークがこの時期に1ヶ月程遅くなることから、小型浮魚類加入のマッチ・ミスマッチ説を支持する事実を見出した。(3)松田は、カタクチイワシ、マイワシ、マサバの資源量変動特性を寿命と成熟年齢、産卵場と時期等の生物内的条件と、水温と輸送および餌環境等の外的条件の両面から検討し、資源量の変動幅は上記の魚種の順に大きいこと、低水準の1990年代に現れたマサバの卓越年級の若齢魚に対する乱獲が、マサバ資源の回復を抑制し、カタクチイワシの高水準期の持続に寄与した可能性があること等を指摘した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 杉本隆成: "西部北大平洋におけるプランクトン量と環境の10年-10数年スケールの変動."水産海洋研究.. 64(3). 173-178 (2000)
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[Publications] Terazaki,M.: "Utilization of Biological Data for IODE system in the WESTPAC area."In : Proceedings of ICWP'99 conference, JODC, Japan Coast Guard. 163-165 (2000)
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[Publications] Kimura,R.: "Nutritional condition of first-feeding larvae of sardine caught in the Kuroshio current areas."ICES Journal of Marine Science. 57. 240-248 (2000)
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[Publications] Matsuda,H.: "Rproductive value, harvest value, impact multiplier as indicators for maximum sustainable fisheries."Environmental Economics and Policy Studies. 2. 129-146 (1999)
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[Publications] 池上彰一: "ニューラルネットワークを用いたモジャコ漁況の予測."黒潮の資源海洋研究. 1. 39-43 (2000)
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[Publications] Kimura S.: "Two processes by which short-period fluctuations in the meander of the kuroshio affect its countercurrent."Deep-Sea Rec.. 1. 745-754 (2000)