1999 Fiscal Year Annual Research Report
熱分解を用いた地球化学的試料中難溶性有機物からの生化学指標の検索
Project/Area Number |
10440159
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
福島 和夫 信州大学, 理学部, 教授 (20106602)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 雅彦 札幌学院大学, 社会情報学部, 教授 (20015580)
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Keywords | バイオマーカー / 熱分解 / グリーン・リバー貢岩 / 熱水生態系 / バイオマット / 熱分解条件 |
Research Abstract |
(1)基準試料としてGreen River頁岩を用い、申請者ら自作の真空熱分解装置でリリースされる指標性有機化合物を、熱分解温度を変化させながら測定した。このシステムの主たる特徴は、1)オフライン分析のために低沸点生成物は分析できないが、2)数十〜百ミリグラムの試料を使って、生成物をステップワイズに捕集・分離しながら、多段階の熱分解を継続できること、3)熱分解生成物中の主成分である炭化水素とともに、たとえばアルコールや脂肪酸など官能基を持つ極性分子の詳細な分析が可能なことである。今年度は、250-550℃の範囲で、熱分解温度と時間の条件について検討した。生成物の分析は、炭化水素画分のみに着目した。 有機溶媒抽出でリリースされるバイオマーカーと比較すると、熱開裂にともなう分解生成物は、およそ300℃以上から検出され、もっとも活発な炭化水素生成は、350-400℃であった。250℃での減圧加熱は、質・量の上から、ほぼ溶媒抽出に対応することが明らかとなった。ただし、収量は熱分解装置を使用した方が若干多く、効率の良いことを示している。時間については、たとえ300℃ほどの温度であっても、最高温度で時間をかけることによって、熱変性がゆっくりと起こり、しだいに不飽和炭化水素が増加してくる。分析的熱分解の温度として一般に500℃前後の加熱が多用されているが、時間と温度の両条件の調整で、新たな情報が得られる可能性がある。現在は、Green River頁岩からの、加熱温度、時間を変えた際の生成物の特性について、炭化水素以外の化合物を分画して個別に解析を進めている。 (2)応用試料として、温泉algal mats,泥炭質堆積物柱状試料、海底熱水系近傍の堆積物試料(有機溶媒抽出処理済み)という現生環境下の試料を用い、最高温度で10分間保持するという一定の条件のもとで、熱分解生成物の相互比較、抽出性脂質成分との比較・対比を試みた。ただし、これらの試料について現段階では、通常の溶媒抽出によって得られる以上の格別な情報は得るに至っていない。
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