1998 Fiscal Year Annual Research Report
HERG Kチャネルの異常によるQT延長の分子機序
Project/Area Number |
10470161
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
平岡 昌和 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (80014281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 哲史 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助手 (80251552)
平野 祐司 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教授 (00181181)
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Keywords | HERG Kチャネル / 遅延整流K電流 / QT延長症候群 / 不活性化の促進 / 内向き整流 / 脱活性化の促進 / 遺伝子異変 |
Research Abstract |
HERG Kチャネルは、心筋細胞の早く活性化される遅延整流K電流(Ikr)をコードする遺伝子であり、その遺伝子異常はQT延長症候群の一つのタイプの病因となる。また、ある種の薬物の標的となって後天性QT延長の原因となることが知られている。そこで、HERG Kチャネルの構造一機能異常によるQT延長の分子機序を明らかにするために研究を行った。我が国のQT延長症候群家系のうち、HERG Kチャネルに変異が見つかっているもの(LQT2)について、アフリカ・ツメガエルの卵母細胞に変異遺伝子を注入して、その発現電流より電流機能抑制の機序を検討した。三つの変異種(T474I,A614V,V630L)について発現電流を見ると、変異種単独では電流を発現せず、野生型と混合注入するとその機能を抑制するdominant negative suppressionを示した。発現電流は、正常に比べ明らかに活性化電流の低下が認められ、その抑制の強さも474,614,630の順に増強した。また、内向き整流性もこの順番で強くなり、外向き電流の減少がもたらされた。特にV630Lでは、定常状態での不活性化曲線が過分極側に変位し、不活性化の速度も増加していた。すなわち、電流低下は遺伝子の変異部位により異なり、コンダクタンスの減少に加えて、不活性化の促進がその異常発現に寄与していることを初めて明らかにした。さらに、このKチャネルの電位関知部位に当たるS4の変異・R534Cについて検討した。その結果、R534Cは単独でも抑制された電流を発現してdominant negative suppressionを示さなかった。その電流は活性化・不活性化曲線を過分極側に変位させ、活性化速度と脱活性化速度を促進した。また、内向き整流は減少する性質を示し、電位依存性の変化とともに、外向き電流を増加させる方向に働くことが判明した。これらの結果より、R534Cの電流抑制は、脱活性化の促進によるとする極めて特異な分子機序を初めて明らかにした。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] T.Nakajima,et al.: "Novel mechanism of HERG current suppression in LQT2:Shift in voltage-dependence of HERG inactivation." Circ.Res.83. 415-422 (1998)
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[Publications] M.Hiraoka,et al.: "Functional modulation of cardiac ATP-sensitive K^+ channels." News Physiol.Sci.13. 131-137 (1998)
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[Publications] M.Hiraoka,et.al.: "Role of chloride currents in changes in action potential characteristics and arrhythmias." Cardiovasc.Res.40. 23-33 (1998)
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[Publications] 中島 忠 他: "遺伝性QT延長症候群に見られるチャネルの機能異常" 心臓. 30. 489-498 (1998)
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[Publications] T.Furukawa,et al: "Functional abnormality of different mutation site of HERG channels in LQT2" J.Mol.Cell.Cardiol.30. A326 (1998)
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[Publications] M.Hiraoka,et al.: "The opening mechanism of K_<ATP> by K^+ channel openers and their potential antiarrnythmic properties." Arch Pharmacol.225. R525 (1998)
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[Publications] 平岡昌和: "心筋のイオンチャネルの機能と病態生理 「循環器疾患の成因」" ライフサイエンス出版, 357-378 (1998)
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[Publications] 平岡昌和: "続心臓代謝実験法 「Kチャネルとブロッカー」" 六法出版社, 33-42 (1998)