1998 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト精子の形態・運動能と染色体異常の関連 : マウス卵への顕微授精による解析
Project/Area Number |
10470339
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
上口 勇次郎 旭川医科大学, 医学部, 教授 (60091568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 誠二 旭川医科大学, 医学部, 教務職員 (10241449)
立野 裕幸 旭川医科大学, 医学部, 助教授 (80163492)
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Keywords | ヒト精子 / マウス卵子 / 顕微授精 / 染色体異常 |
Research Abstract |
1. ICSI技術の習得:ICSI(卵細胞質内精子注入)法に関して国内で最も高い技術をもつ研究室の一つである福島県立医大・産婦人科学教室へ、研究分担者の渡邊を半月間派遣して技術研修を行わせた。帰学後、研究機器(マイクロマニピュレーター等)の設置、調整を行った。 2. ICSI技術の改良:マウス卵子・ヒト精子の培養液の検討、ピエゾパルスの調整、ICSI技術の修練を行うとともに、新鮮(intact=I)精子のICSI実験(実験I)を行い、続いて凍結解凍(frozen-thawed=FT)精子のICSI実験(実験II)を行った。用いた精子は2実験とも形態・運動能の正常な精子である。 3. ICSI卵の発生率:実験I及びIIで各409卵、242卵がICSIされ、そのうち、213卵(62.1%)、149卵(78.4%)が第1卵割中期に到達し、200卵(58.3%)、141卵(74.2%)で染色体分析が可能であった。残り130卵(37.9%)及び41卵(21.6%)は膨化精子期または前核期で発生を停止した。実験IIで卵の発生率及び染色体分析率が有意に高かった理由としては、(1)後者の実験が後で行われたので、その間にICSIの技術が向上した、(2)FT精子では凍結解凍過程で細胞膜の損傷が起こり、それが卵細胞質内での精子膜の崩壊・前核形成に促進的に作用した、という2つの可能性が考えられるので、ICSI技術が安定した現時点で再調査する必要がある。 4. ヒト精子及びマウス卵子ゲノムの染色体異常:実験I、IIで、構造的染色体異常をもつ精子はそれぞれ19卵(9.5%)、11卵(7.8%)、異数性精子は3卵(1.5%)、l卵(0.7%)で、いずれの頻度にも有意差はなかった。染色体異常をもつマウス卵は27卵(13.6%)及び8卵(5.7%)で、実験Iで有意に高かった。その理由には、上(第3項)で述べた(1)の可能性が考えられるので、今後さらに検討が必要である。
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