Research Abstract |
α,β,γ-シクロデキストリン(CDと略)のC2,C3,C6同士をジスルフィド連結したホモ,ヘテロ二量体を合成し,メチルオレンジ包接の会合定数を測定した結果と,合成の容易さを考慮して,官能化二量体の素材として,β-CDのC6同士をジスルフィド連結した二量体を選び,触媒基となりうるイミダゾール(Imと略)をこの二量体の適当な位置に導入すること,そしてそのエステラーゼ活性を検討した.1.Imを特定位置に持つβ-CDジスルフィド二量体の合成既知の方法を用いて,β-CDの6A,6B,6A,6C,6A,6DのOHをヨードで置換し,一方のヨードをチオ尿素誘導体で置換してチオウロニウム塩とし,二種の位置異性体を分離した.その異性体の残存ヨードをImで置換し,さらにチオウロニウム塩をSHに変換した.このSHを酸化することによって二つのImを特定位置に持つβ-CDジスルフィド連結ホモ二量体6種を合成した.また同様に,上記の方法で合成した特定位置にSHとImを持つβ-CDと,C6のOHをSHで置換したβ-CDとから一つのImを特定位置に持つβ-CDジスルフィド連結ヘテロ二量体6種を合成した.全てのジスルフィド二量体の位置異性決定は,我々が既に位置決定した標品を基礎として行った.2.エステラーゼ活性上記の一つあるいは二つのImを特定位置に持つβ-CDジスルフィド二量体計12種,Im,β-CDジスルフィド二量体,ImをC6に持つβ-CDそれぞれについてp-tert-butylphenyl p-nitrophenylcarbonateを基質とし,25度C,中性でのエステル加水分解を行った.触媒濃度0.25mM,エステル濃度0.03mMでの擬一次反応速度は,無触媒に比べて,β-CDジスルフィド二量体は2倍,Imは4倍,ImをC6に持つβ-CDは100倍,一つあるいは二つのImを特定位置に持つβ-CDジスルフィド二量体はそれぞれ約200倍,約1000倍であった.触媒反応速度定数,包接錯体の解離定数を求めた結果,二量体化によって,解離定数が一量体の1/10,適当な位置に二つのImが位置することによって触媒反応速度定数が.Imが一つの場合より10倍にもなることが判明した.
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