1999 Fiscal Year Annual Research Report
絶滅危惧動物の遺伝的多様性評価法と遺伝子資源の保存に有効な分子生物学的技術の開発
Project/Area Number |
10556074
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
増田 隆一 北海道大学, 理学部, 助手 (80192748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅原 千鶴子 北海道大学, 理学部, 教務職員 (80291227)
押田 龍夫 北海道大学, 理学部, 研究機関研究員
大舘 智志 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (60292041)
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Keywords | 遺伝的多様性 / 生物地理 / 分子系統 / 種の保全 / 日本固有種 / 進化 |
Research Abstract |
固有種を含む日本産哺乳類において、各地域の集団間および集団内の遺伝的多様性を分析した。さらに、遺伝的変異に基づく生物地理的歴史と日本列島周辺の陸橋・海峡の形成史を比較検討し、日本固有種や集団の起源・特性を解析した。本年度は、エゾヒグマ、ニホンジカ、イイズナ、オコジョ、ホンドテン、クロテンを分析対象とした。 エゾヒグマ集団において、ミトコンドリアDNA(mtDNA)のコントロール領域およびチトクロームb遺伝子の塩基配列の分子系統解析を行った。北海道に分布する3つの遺伝的集団と大陸産ヒグマ集団と比較することにより、北海道集団の遺伝的特徴は世界のヒグマの分布拡散の歴史を解明する上で重要なポイントになることが示唆された。ニホンジカ集団について、mtDNAコントロール領域の分子系統解析を行い、北海道-本州集団および九州(その周辺島嶼を含む)集団という大きな2つのグループに分類することができた。その境界は中国地方にあると推定されるが、詳細は現在調査中である。イイズナおよびオコジョについて、mtDNAコントロール領域の遺伝距離に基づき、北海道集団と本州集団を比較したところ、イイズナにおいてブラキストン線をはさんだ大きな遺伝的分化を認めた。一方、オコジョの北海道-本州間の遺伝距離は小さく、イイズナの方が長期間にわたって地理的に隔離されていることを示唆している。mtDNAのチトクロムb遺伝子全塩基配列の比較により、ホンドテンとクロテンは遺伝的に大きく分化していた。ホンドテンにおいて、本州・九州・四国を通した地域の明瞭なクラインはないように思われた。対馬産テンは、本州産とは別亜種として分類されているが、その遺伝的分化は小さかった。 DNA抽出法および遺伝子増幅法の改良により、博物館に長期間(100年前後)保存された組織標本からのDNA分析にも成功した。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] T. Matsuhashi: "Microevolution of the mitochondrial DNA control region in the Japanese brown bear (Ursus arctos) population"Molecular Biology and Evolution. 16. 676-684 (1999)
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[Publications] J. Nagata: "Two genetically distinct lineages of the sika deer, Cervus nippon, in Japanese islands : Comparison of mitochondrial D-loop region sequences"Molecular Phylogenetics and Evolution. 13. 511-519 (1999)
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[Publications] N. Kurose: "Phylogeographic variation in two mustelines, the least weasel Mustela nivalis and the ermine M. erminea of Japan, based on mitochondrial DNA control region sequences"Zoological Science. 16. 971-977 (1999)
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[Publications] N. Kurose: "Intraspecific variation of mitochondrial cytochrome b gene sequences of the Japanese marten Martes melampus and the sable Martes zibellina (Mustelidae, Carnivora Mammalia) in Japan"Zoological Science. 16. 693-700 (1999)
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[Publications] 増田隆一: "遺伝子から検証する哺乳類のブラキストン線"哺乳類科学. 39. 323-328 (1999)
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[Publications] 増田隆一: "ブラキストン線(津軽海峡)に関する食肉類の生物地理と遺伝的特徴"哺乳類科学. 39. 351-358 (1999)
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[Publications] 増田隆一: "地球・人間・環境シリーズ 環境保全・創出のための生態工学"丸善(分担執筆). 238 (1999)