1999 Fiscal Year Annual Research Report
環境ストレス応答の中枢機序における脳内肥満細胞の意義
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10557008
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
片渕 俊彦 九州大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (80177401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 務恵 九州大学, 医学部, 助手 (60264040)
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Keywords | 肥満細胞増殖因子 / c-kitミュータントラット / シナプス可塑性 / 空間認知学習 / 海馬スライス / Paired-pulse facilitation / アラキドン酸 / 中和抗体 |
Research Abstract |
c-kit受容体のチロシンキナーゼドメインに4個のアミノ酸欠損が認められるWs/Wsミュータンラットでは、空間認知学習の障害、および苔状線維-CA3回路における長期増強(LTP)やpaired-pulse facilitation(PPF)の異常あることを、平成10年度に報告した。本年度は、c-kitのリガンドであるstem cell factor(SCF)を、正常マウスの海馬スライス切片に投与し、PPFがどのように変化するか、また、SCFの作用機序を種々の阻害剤を用いて検討した。さらに、シナプス増強における内因性SCFおよびc-kitの役割を、抗c-kit中和抗体を用いて検討した。 BALB/cマウスの海馬スライス標本を作成し、同心双極電極で苔状線維を刺激し、CA3領域で誘発電位を記録した。SCF投与前後でPPFは、テタヌス刺激時と同様、投与前のPPFが大きいほど投与後はPPFが小さく、投与前が小さいほど投与後はPPFが大きくなるという負の相関が観察された。PPFに対するSCFの作用は、受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるK252a、およびc-kitチロシンキナーゼによって活性化されるPI3'キナーゼの阻害剤であるワートマニンによって消失した。また、RHC80267では阻害されなかったが、メパクリンが有効であった。PPFは、おもにシナプス前膜の変化に由来するシナプス増強であることから、SCFによるシナプス後膜のc-kit受容体の活性化は、逆行性神経伝達物質としておそらくアラキドン酸の産生を促進していると考えられた。また、スライス標本をあらかじめc-kit受容体の中和抗体を含むリンガー液で2時間プレインキュベートすることで、内因性SCFの作用を阻害し、テタヌス刺激(100Hz、1秒)によるシナプス増強どのように修飾されるかを検討したところ、テタヌス刺激によるLTPが著明に抑制されたことから、テタヌス刺激による内因性SCFの産生が示唆された。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 片渕俊彦: "ストレスと免疫系"感染 炎症 免疫. 28(2). 106-115 (1998)
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[Publications] Kamikawa,H.: "Hyperalgesic response to noxious stimulation in genetically polydipsic mice."Brain Research. 846. 171-176 (1999)
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[Publications] Hori,T.: "Evidence for th einvolvement of A V3V in the circulating IL-β-to-brain communication."Journal of Thermal Biology. 25. 29-33 (2000)
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[Publications] 片渕俊彦: "ストレスとサイトカイン"医学のあゆみ. (印刷中). (2000)
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[Publications] 片渕俊彦: "インターフェロン-その研究の歩みと臨床応用への可能性"ライフサイエンス. 211 (1998)
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[Publications] 片渕俊彦: "免疫学から見た神経系と神経疾患"日本医学館. 374 (1999)
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[Publications] Katafuchi,T.: "Thermotherapy:Principles and Practice-Applications in Neoplasia,Inflammation,and Pain-"Springer-Verlag Tokyo Inc.(印刷中. (2000)
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[Publications] Hori,T.: "Psychoneuroimmunology"Academic Press Inc.(印刷中). (2000)