1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610002
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山田 友幸 北海道大学, 文学部, 教授 (40166723)
|
Keywords | 言語行為 / 発話行為 / 意味 / 内容 / 力 / 発語内の力 / 状況 / 状況理論 |
Research Abstract |
本研究代表者は従来より、米国の哲学者バーワイズとペリーによって創始された状況理論の枠組のもとで、英国の哲学者オースティンの真理の理論を拡張することにより、言語行為の種類(発語内の力)の違いを考慮に入れつつ、言語行為(発話行為)全般を一貫した仕方で扱うことのできる、発話の内容の理論の構築を目指して研究してきた。本研究の目標は、新たに採用した帰属準拠のアプローチのもとで、この発話の内容の理論の基本的部分を定式化するとともに、さらに同じ帰属準拠のアプローチのもとで、発語内の力の理論をも定式化し、両者を統合した発語内行為の一般理論の基本的な枠組を確立することである。帰属準拠のアプローチとは、行為者に発語内行為を帰属する形の式を含むような行為の理論の枠組のもとで、発語内行為の内容と力をも、行為者に帰属される行為そのもののもつ特徴として統合的に扱おうとする、本研究に独自のアプローチである。初年度にあたる平成10年度の研究により、このアプローチは状況理論との折り合いもよく、言明や報告のような真偽の問われうる発語内行為ばかりでなく、命令や約束のような真偽が問題にならない種類の発語内行為に関しても、その内容が充足されるための条件を、発語内行為そのものの特徴の一つとして定式化できることが明らかになった。また、このアプローチのもとでは、発語内行為の力の相違をも、それぞれの種類の行為が状況にもたらす変化のタイプの相違として分析できる見込みが得られた。ただし、そのためには発語内行為がもたらす変化を特徴づける際に、義務や権利のような概念や、行為と行為のもたらす新たな状況との関係などを扱う強力な記述言語が必要であり、その定式化は11年度以降の課題である。
|