1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山田 友幸 北海道大学, 文学部, 教授 (40166723)
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Keywords | 言語行為 / 発話行為 / 意味 / 内容 / 力 / 発語内の力 / 状況 / 状況理論 |
Research Abstract |
本研究代表者は従来より、状況理論の枠組みのもとで、J.L.オースティンの真理の理論を拡張することにより、発語内行為の種類の違い(発語内の力の違い)を考慮に入れつつ、発語内行為全般を一貫した仕方で扱うことのできる、発話の内容の理論を構築することを目指してきた。本研究の目標は、この発話の内容の理論を、帰属準拠のアプローチのもとで定式化するとともに、同じアプローチのもとで、発語内の力の理論をも定式化し、両者を統合して、発語内行為の一般理論の基本的な枠組みを確立することである。帰属準拠のアプローチとは、行為者に発語内行為を帰属する形の言明をベースにして、発語内行為の内容と力を、帰属される行為そのものの特徴として統合的に扱おうとする本研究に独自のアプローチである。初年度にあたる平成10年度の研究により、このアプローチは状況理論と折り合いがよく、そのもとで、真偽が問題になる言明や報告などの発話と、真偽が問題にならない命令や約束などの発話の双方に、一貫した扱いを与える発話の内容の理論を定式化しうることが明らかになっている。そこで第2年度にあたる平成11年度の研究では、発語内の力の理論に研究の重点を移し、その基礎となる出来事の一般理論に関する調査と、発語内の力の定式化のありうる方式の検討を行った。このうち前者に関しては、バーワイズとセリグマンのチャンネル理論の応用が有望であるとの感触を得ている。また後者に関しては、平成10年度に得られた見込みに基づいて、発語内行為の力の相違を、発語内行為がもたらす状況の変化のタイプの相違の観点から分析することを試み、言明と命令と約束の違いばかりでなく、命令と依頼の違いをも検討し、興味深い結果を得つつある。しかし力の理論の定式化には、権利や義務、可能性、命題的態度等をも記述しうる言語が必要であり、その定式化はなお課題として残っている。
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