2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610051
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
加藤 哲弘 関西学院大学, 文学部, 教授 (60152724)
|
Keywords | 日本の近代美学 / 美学の社会的機能 / 教養階級の形成と美学 / 日本の文化政策 / 西周 / 矢代幸雄 |
Research Abstract |
本年度の課題は「近代における美学芸術学の成立やその社会的背景に関する基礎的な資料の収集とその考察」および「文学や音楽など芸術諸ジャンルにおける研究活動との関連から美学の成立について考察するための多様な資料の収集とその考察」であった。具体的には、すでに資料の収集が進められてきた明治期の美学芸術学研究者たちに加えて、文学の森鴎外、音楽のケーベルらの著作を収集しその検討を進めることが計画されていた。 このうち、第一の課題については、論文「近代日本における美学の社会的機能:西周の場合」の発表により、その成果をほぼ公表できたと思う。ここでは、これまでもっぱら思想史の内部で議論が展開されてきた西周の「美学」について、「文人」に代わる新たな教養階級の形成や、列強に肩を並べるための文化政策との関わりを指摘することができた。また、課題として公表が予告されていた矢代幸雄について研究成果もまもなく公刊される。 一方、文学や音楽と美学との関連については、資料収集や研究者たちとの情報交換にとどまり、必ずしも充分な調査や成果公表を行えなかった。この背景には、研究申請時とくらべて日本の近代美学についての研究の量と質が飛躍的に向上しているために、問題設定をある程度絞り込まなければそれに対応できないという事情がある。しかし、最終年度となる来年度には、その点を考慮したうえで、可能なかぎり幅広く資料を検討した成果の公表を目指したい。 なお、本年度の設備備品費は、おもに19世紀における芸術研究方法論関係の図書の購入に充てられた。また、出張旅費は、会津若松における「さざえ堂」の調査、および東京国立博物館における常設展示や特別展などを通じた近代美術や近代美術制度関係の資料調査、関係者との意見交換や情報交換のためのものである。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 加藤哲弘: "制度としての美術史学とその研究対象"美学論究. 15. 1-18 (2000)
-
[Publications] 加藤哲弘: "『関西学院大学111周年文学記念論文集』所収「近代日本における美学の社会的機能:西周の場合」"関西学院大学文学部. 374 (2000)
-
[Publications] 加藤哲弘: "『講座日本思想第4巻「芸術」』所収「矢代幸雄と近代日本の文化政策」"晃洋書房(発表予定). (2001)