2000 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚コミュニケーションの基礎としてのリズム知覚の研究
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10610076
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Research Institution | 九州芸術工科大学 |
Principal Investigator |
中島 祥好 九州芸術工科大学, 芸術工学部, 教授 (90127267)
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Keywords | リズム知覚 / 時間知覚 / 音エネルギーの時間的分布 / 時間縮小錯覚 / グライド音 / 時間的空隙 |
Research Abstract |
これまで、リズム・パターンを構成する音と音との時間間隔の長さや、個々の音の強さや長さを様々に変化させ、時間間隔の知覚がどのように変化するのかを、体系的に検討してきた。今年度は、区切音の物理的な性質が、時間間隔の知覚にどのように影響するかに特に注目し、基礎的なデータを蓄積した。二つの区切音の始まりから始まりまでの時間間隔は、第1区切音が長ければ過小評価され、第2区切音が長ければ過大評価されることがこれまでに判っている。しかし、これまでは定常音のみを区切音に用いてきたので、区切音の長さそのものがこのような過小評価、過大評価を生じているのか、あるいは、長さの増加によって、音エネルギーの時間的な分布が後の方に広がることが影響しているのか、決定することができなかった。そこで、持続時間を一定にした区切音の内部における音エネルギーの時間的分布を体系的に変化させることにより、この問題に検討を加えた。その結果、音エネルギーの時間的分布が、ある程度時間長の知覚に影響するが、それだけでは、定常的な区切音の長さが、2つの区切音によって示される時間間隔の知覚に及ぼす影響を説明しがたいことが判った。一方、以前から調べている、区切音の長さが時間縮小錯覚に及ぼす影響について、大量のデータを集め、区切音が長くなると、時間縮小錯覚が減小し、最大の錯覚を生ずる時間条件も変化することを、決定的な形で示した。このような研究とは別に、グライド音の中に含まれる100ms未満の時間的空隙がどのように知覚されるかに関して、現象観察実験を行い、数秒程度の長いグライド音と、数百ミリ秒程度のグライド音とが交差し、交差点の近傍で数十ミリ秒以下の空隙を共有するとき、この空隙は、短いグライド音に含まれるように知覚され、長いグライド音が途切れていることは明確には知覚されないことを確かめた。
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[Publications] G.B.Remijn & Y,Nakajima: "On the perception of two crossing frequency glides sharing a very short temporal gap"日本音楽知覚認知学会平成12年度春季研究発表会資料. 27-34 (2000)
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[Publications] Y.Nakajima,T.Sasaki,K.Kanafuka,A.Miyamot,G.Remijn,& G.Ter Hoopen: "Illusory recouplings of onsets and terminations of glide tone components"Perception & Psychophysics. 62(7). 1413-1425 (2000)
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[Publications] S,Kobayashi & Y.Nakajima: "The effect of frequency modulations on auditory organization"Proceedings WESTPRAC VII (The Seventh Western Pacific Regional Acoustics Conference). Vol.1. 243-246 (2000)
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[Publications] Y.Nakajima & R.Miyauchi: "The influence of level difference of marker tone bursts on the perception of the ratios between neighboring empty durations"Proceedings WESTPRAC VII ( The Seventh Western Pacific Regional Acoustics Conference). Vol.1. 619-624 (2000)
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[Publications] 綱島慎平,中島祥好: "日本語音声の補完現象で生じる特殊拍について"日本音響学会音楽音響研究会資料. Vol.19 No.6. 1-5 (2000)
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[Publications] G.Remijn & Y.Nakajima: "The perception of two crossing frequency glides sharing a very short temporal gap."日本音響学会音楽音響研究会資料. Vol.19 No.6. 55-62 (2000)