1998 Fiscal Year Annual Research Report
介護保健導入後におけるコミュニテイ・ケアの理念と具体化に関する比較地域的研究
Project/Area Number |
10610198
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
久塚 純一 早稲田大学, 社会科学部, 教授 (90037086)
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Keywords | 介護保険 / コミュニティ・ケア / 広域連合 |
Research Abstract |
平成10年度の研究は、1.福岡県内の市町村、2.佐賀県内の市町村の二圏域の介護保険事業実施計画の策定について、書面による調査とインタビュー調査をおこなった。 調査対象を、特に、福岡県と佐賀県に絞った理由は以下の点にある。制度上、介護保険の保険者は市町村であることが原則となっている。そのことから、小さな市町村にとっては要介護認定事務サービスの提供、保険財源等について困難性が付きまとうことは予測された。ここで、小さな市町村は以下のような二つの考えかたのいずれかを選択しなければならなくなった。それは、「内容的に不十分でも、地域特性を踏まえた介護保険とか?」、「画一性や平等性を重視するか?」であった。全国的に介護保険事業の広域的実施が模索されている過程で、まず、佐賀県では、佐賀市を中心とした大きな広域連合が実現に向かって大きく前進した。さらに、福岡県では、ほぼすべての町村ともいえる70近くの町村が広域連合的実施に踏み切ろうとした。とりわけ、福岡県に見られるようなうな大連合は前代未聞であり、多くの議論を巻き起こしている。以上のことから、「地域特性の重視か?」、「画一的平等性?」という根幹に係わる問題を、もっぱら介護保険事業の広域的実施という視角から検討することを目的として、対象を二つの県に限定して集中的な調査を実施した。 アンケート調査とインタビューを通じて、以下のような担当者の意識と今後の課題が明らかとなった。それらは、1.まず、介護保険についての意識は、県からの情報の流れがスムーズでなかったこともあって、準備に取りかかることも遅れがちであり、従って、アイデンティティーを持って地域特性を反映させた事業計画を作ろうとする意識が希薄になっていっと考えられること、2.そのこととの関係で、「出来れば苦労せずに、画一的な事業実施財計画が策定されれば楽になる」という意識が担当者の意識の基底に芽生え、「平等性」の確保をうたいつつ、広域的実施に向かわせたと考えられること、3.以上のことから、今後は、地域特性を踏まえた実際のサービス提供が、住民から距離のある大圏域で実施できるかが課題となるであろうこと、である。 平成10年度の研究を踏まえ、11年度は、介護保険の広域的実施に当たって、広域連合、支所、市町村の三者関係がどのように作用したかを、「要介護認定」、「保険料」、「サービス提供」の三点を中心に調査・研究することが必要となろう。
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Research Products
(1 results)