1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610211
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
安福 恵美子 阪南大学, 国際コミュニケーション学部, 助教授 (60210275)
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Keywords | ツーリズム / 観光対象 / オーセンティシティ / 世界遺産 / イメージ形成 / 近代社会 |
Research Abstract |
本年度における文献調査と現地調査の概要は次の通りである。 ツーリズムと文化遺産に関する文献調査からは、地域(あるいは国家)としての文化遺産が形戒される過程において、それが観光対象(ツーリスト・アトラクション)となることが文化遣産としての意味付けに大きく作用していることがわかった。一方、自然が観光対象となる自然観光においては、自然に対するツーリズムの関与がエコ・ツーリズムのガイドライン作成の動きなどにみられるが、そこにおいては、ツーリストに対して自然を解説するインタープリター(自然解説者)の存在が重要とされるなど、自然保護と自然の呈示に対する多様な取り組みが報告されている。文化と自然の呈示においては、ツーリズムという視点から近代の社会構造をいかに捉えるかが大きな課題であり、近代における観光対象の形成にみられる言説の分析が重要である。 世界遺産に登録された「白川郷・五箇山の合掌造り集落」における現地調査からは、世界遣産登録による観光客の増加など、いわゆる「世界遺産効果」がみられることがわかった。合掌造り集落の地域全体が観光対象となることにより、「懐かしいふる里」としてのイメージが形成されているが、そこにおいては、「オーセンティシティ(本物性)」が、合掌造りという建造物の保存に対してばかりでなく、地域全体の環境そのものに関わる問題となっている。そのため、合掌造り集落全体の「オーセンティシティ」に対して深く関わるツーリズムは地域における文化の呈示に作用する重要なファクターとなっている。
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