1999 Fiscal Year Annual Research Report
地域の復興と都市宗教の力-阪神大震災被災地における宗教の実証的研究
Project/Area Number |
10610215
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Research Institution | SAPIENTIA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
三木 英 英知大学, 文学部, 助教授 (60199974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 太郎 英知大学, 文学部, 教授 (50190591)
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Keywords | 民俗宗教 / 巡礼 / 聖地 / 他界観 / コムニタス / 教団宗教 / 伝道 / ボランティア |
Research Abstract |
阪神・淡路大震災被災地において宗教は何らか力を発揮することができたのか(これからも何か為すことができるのか)というテーマのもと取り組んだのが今回の調査研究であるが、我々は1995年以降の阪神・淡路という特定時空間での宗教の力にのみ言及したかったわけではない。社会はこれからも安定的に存続するとは断言できず、いつ危機的状況に陥るやもしれない。そんなとき、人々を癒し一つに結びつけることができるなら、危機は試練とポジティブに解釈され、社会が危機を脱する可能性は高まろう。そして人々を慰安し連帯せしめる力を発揮してきたのが何より宗教であったことは、歴史が教えてくれるところである。では「宗教離れ」が指摘されて久しい日本社会は、向後遭遇するかもしれぬ危機に宗教抜きで立ち向かうことになるのだろうか。あるいは大方の予想を裏切り、宗教は日本人の深奥において根強く、人々を支え動機づける力を未だ果たしうるといえるだろうか。我々の知りたいことはこれであり、被災地はそのための貴重なフィールドであった。 そして被災者は、自身と地域社会が立ち直るため、確かに宗教を動員していた。祭り開催に力を注いだり巡礼的な行事を創出したりして、復興への途を着実に歩んでいたのである。これは、宗派・教団に代表される制度宗教・組織宗教ではない(教団への一般の期待は小さく、また教団に意欲があったとしても法的規制もあり、目覚しい働きは期待できない)。おそらく被災者は、復興の一助にと参加している行動が宗教活動であるとは意識していまい。とはいえ、祭りは宗教儀礼以外の何者でもないし、幾つかの地点を読経、献花、黙祷しながら経行く行動は明らかに巡礼という宗教活動である。さらにいえば、両者とも生活に密着し生活に溶け込んだ民俗宗教の要素である。我々の研究が明らかにしたことは少なくないが、我々の深奥で民俗宗教的心意が健在であることを指摘できたことは、一つの大きな収穫であった。
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