1998 Fiscal Year Annual Research Report
プロイセン・ドイツにおける近代学校装置の形成と教育方法の改革
Project/Area Number |
10610223
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
大崎 功雄 北海道教育大学, 教育学部・旭川校, 教授 (10002635)
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Keywords | 近代学校 / プロイセン教育改革 / L.ナトルプ / ベル=ランカスター・システム / モニトリアル・システム / 一斉教授法 / 学校規律 / 教師-生徒関係 |
Research Abstract |
近代の学校システムをプロイセン・ドイツにおける近代学校形成期に限定して,学校それ自体の内部構造において解明しようとするのが本研究の目的である。今年度は,教育改革の理論的・実践的担い手であったB.C.L.ナトルプを対象にして解明した。1.18世紀末〜19世紀初頭のプロイセンにおける国民教育制度形成期の初等学校を舞台として一連の教育方法改革が展開したが,その有力な潮流としてベル=ランカスター・システムがあった。2.プロイセンにおいては,ベル=ランカスター・システムは近年までのわが国における一斉教授法としての理解と相違して,主として相互教授法(wechsel seitiger Unterricht od.gegenseitiger Unterricht)の系譜として押さえられていた。3.それは一時的流行として消滅したのではなく,一部においては19世紀の前半全体に亘って流布し,さまざまな教育論争の一つになっていた。4.プロイセンにおける同システムの最初の紹介者にして批判者はナトルプであるが,彼におけるベル=ランカスター・システム理解は,(1)同システムが私教育・私学校の体系擁護と公学校制度の軽視という脈絡において喧伝されている限りにおいては肯定できないとする,プロイセン改革の立場からのものであり,(2)また,同システムの内部構造については「教授法」としてのみの理解ではなく,「教授」と「秩序」の両面を備えたものとして捉えており,(3)しかも,教授法の側面よりも学校の「秩序」形成において果たす機能を評価していた。それは,学校を教師と生徒の主観的意図を超えた「教師-生徒関係」を枠づけるシステムとして捉えての評価であった。(4)にも拘わらずナトルプは最終的には同システムの一般的原理を限界あるものとして批判するのであるが,それは同システムが有する各種の「斉一性」への懐疑・批判に根ざしている。その場合の学校機能の把握について解明するのが今後の課題である。
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Research Products
(1 results)