1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610304
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Research Institution | KYUSHU INSTITUTE OF DESIGN |
Principal Investigator |
松永 建 九州芸術工科大学, 芸術工学部, 教授 (40040993)
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Keywords | 神楽 / 九州北部地域 / 保持組織 / 音楽構成 / 芸能集団 / 神職神楽 |
Research Abstract |
本年度は、九州北部地域の重要な神楽地帯である長崎県壱岐、平戸、五島神楽(有川町祖母君神社神楽を除く)を中心として調査した。また、福岡県豊前市、築城町の豊前系神楽、大分県庄内地方の豊後系神楽、宮崎県諸塚村戸下神楽を引き続いて取材調査した。調査資料に基づいて各地の神楽の音楽的特徴、神楽和歌、舞の形態、維持組織の様態等について比較検討を行っているが、かなりの膨大な資料に及び、また検討中のものがほとんどであるので、以下に本年度の主調査地域である長崎県北部の神楽について要約して示す。 長崎県壱岐、平戸神楽と南松浦郡五島の神楽は同系統といわれている。演目の名称は共通するものが多いが、各地に異同がある。壱岐神楽には「湯立」が神楽が上演されている拝殿横の庭で行われる。五島の岐宿神楽には岩戸開きに相当する演目名がなく、他の演目に岩戸系の神名が割り当てられている。維持組織の様態、神楽上演の舞人の資格は、壱岐と平戸は神社の神職が寄り集まって実施されるが、五島では社人が担当している。上五島町青方神社では子供の参加が多いのが特徴的である。また、舞所は平戸は2畳の薄べり、五島青方神楽は2畳の敷物を置き、岐宿は板敷である。太鼓は平戸が1面に対して、他は共通して一対が並んで設置され、2人によって演奏されるのが原則である。笛は複数人で演奏されるので、ピッチが調整された笛(龍笛)が用いられる。しかし、伝承の実態は次第に変化しており、特に神楽和歌の比較ではバラツキが目立っており、より詳細な検討が必要である。壱岐・平戸・五島の神楽は、明治以降に全国の大多数の神楽が民間組織に編成替えして伝承されているのに対して神職神楽としての伝承を維持している点が重要な特質である。
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