1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610311
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Research Institution | Koshien University |
Principal Investigator |
和田 正平 甲子園大学, 人間文化学部, 教授 (50110086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 仁子 日本学術振興会, 特別研究員
鈴木 健太郎 日本学術振興会, 特別研究員
岡田 浩樹 甲子園大学, 人間文化学部, 専任講師 (90299058)
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Keywords | 在日朝鮮韓国人 / 死後結婚 / 死生観 / シャーマン / 朝鮮寺 / 招魂儀礼 / 宗教 |
Research Abstract |
本研究は、問題が宗教と個人のプライバシーに関わるため、慎重な調査と情報提供者との間に十分な信頼関係を築くことが必要である。そこで平成11年度は、主な対象である生駒、宝塚および東京荒川区の在日朝鮮韓国人居住地と「朝鮮寺」を訪問し、調査対象との信頼関係の構築につとめ、併せて情報収集と基礎的資料収集をおこなった。また、生駒の朝鮮寺でおこなわれた招魂儀礼の参与観察をおこなった。 本年度の調査の成果は次の3点である。第1に、現在も死後結婚の存在を確認し、その概要を知り得たことである。事例の性格上、不定期におこなわれるため、本年度は実際の観察はできなかったものの、生駒だけでも死後結婚は年に5回から6回おこなわれているとの確かな情報を得ることができた。第2に、各種の儀礼を主宰している「朝鮮寺」の変化である。主な先行研究の調査から二十年が経過し、かっての在日朝鮮韓国人のシャーマンたちは死亡ないしは高齢化し、朝鮮寺の運営に携わらなくなりつつある。かわって韓国本国から来たシャーマンや僧侶が無主となった朝鮮寺を借り、慰霊祭等の儀礼をおこなっている。ここに国境を越えて展開する宗教職能者の活動や、在日朝鮮韓国人の死生観における「伝統」思考など、今後展開すべき問題を見出すことができた。第3に、儀礼において、シャーマンの口寄せを一世に対しては韓国語で、二世以下には日本語でおこなうこと、密教などの行事への参加など、本国にはない変化も見出された。これは在日朝鮮韓国人の世代交代に適合した変化であり、ある意味で在日独自の死生観の生成を示す現象といえる。
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