1998 Fiscal Year Annual Research Report
土地関係史料・戸口史料分析による江戸時代村落社会の基礎的研究
Project/Area Number |
10610327
|
Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
原田 誠司 兵庫教育大学, 学校教育学部, 講師 (50252820)
|
Keywords | 百姓 / 下人 / 戸口史料 / 小農自立 |
Research Abstract |
今年度は、蒐集した戸口史料の一つ、具体的には、寛永二十一年(1644)「備中国川上郡之内三沢村家数人数牛馬改帳」の個別分析をかなり深く行なった その結果、一見したところでは、当該史料に看られる、本百姓と家持下人との経済的格差には無視しがたいものがあり、所謂「小農自立」の過程段階と評価するところとなるが、詳細に分析を加えたところ、異なった結果が得られた。つまり、経済的実態のみならず、社会的実態(家族形態・年齢別構成・年齢と個人名との関連・婚姻の時期・子供数の分布)をも併せ検討すれば、家持下人には複数のタイプが存在することが明瞭である。すなわち、中には、本百姓と血縁関係を推測させるものがあり、全体として評価すれば、その社会的格差は緩慢であり、「小経営」農民は、一般的形成を果たしている、と評価するのが妥当である。 また、家族形態を全体としてみれば、小家族・直系家族が支配的であり、複合家族は例外的位置を占めるに過ぎない。三沢村は奥深い山村に位置し、なお中世的社会関係の濃厚な土地柄と推測される。にもかかわらず、上記の様相を示すところから考えれば、この村落類型の広く分布することが推量され、今後とも「研究計画」にしたがって、戸口史料を広く蒐集し、分析を加えて先の仮説の検証に努めたい。
|