1998 Fiscal Year Annual Research Report
16〜17世紀メスタ協議会の内部構造の変容と〈平地の〉牧畜業者、王権との相関関係
Project/Area Number |
10610379
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Research Institution | Sapporo University |
Principal Investigator |
五十嵐 一成 札幌大学, 法学部, 教授 (10124893)
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Keywords | メスタ協議会 / カスティーリャ / 〈平地の〉牧畜業者 / 移牧 / 〈帝国〉の重荷 / セルビシオ・イ・モンタスゴ税 / トラステルミナンテス / エスタンテス |
Research Abstract |
誉れ高きメスタ協議会に、カスティーリャの中部、当時の言葉で言う<平地の>牧畜業者が本格的に参入したのは、16世紀の半ば以降と考えられるが、彼らを包含したメスタ協議会は、従来の、耕種農業との対立、山地と平地の対立に加えて、また代えて、新たに内部対立の種を抱え込むことになった。冬及び夏の移牧先の確保が、人口増加と食糧需要の増大、而して耕種農業の膨張した16世紀の後半から17世紀初めにかけて、いよいよ難しくなっていった状況と、カスティーリャ王権の財政難が極まる中、<帝国>の重荷がますますかの地の担税民の上に重くのしかかっていった時期とが一致したが、王権はセルビシオ・イ・モンタスゴ税の更なる確保のために、平地の移牧業者(その多くはトラステルミナンテスと呼ばれた中近距離移牧業者)は勿論、更には、自らの裁判管区内で飼養する(その中での小規模の移動を含む)に過ぎない畜群所有者=エスタンテスにも課税することを良しとた。またそれら飼養者も、牧畜活動でのメスタ協議会による庇護、市町村の裁判管轄からの自由を望んで、それを容認したのであった。何故メスタ協議会への参加者が増えたのかという問題には、王権の課税強化と村落寡頭支配層の増強の情勢(財政的観点から、王権の容認、助長する所であった)が、双方から後押ししていたことが初めて明らかになって来たのである。トラステルミナンテス、及びエスタンテスのメスタ協議会への参入状況と、後者の1604年に至っての追放の経緯を既に解明した私は、次いでこのクロノロジーの背景の分析を課題としているが、新史料を発掘できたこともあり、直接的には財務評議会を通じて現れる王室財政の積極的な関わりが、はっきりして来た。近世カスティーリャ社会・経済の変容の重要な要素がカスティーリャの<帝国>への膨張にあったという私のテーゼは、このテーマに関しても妥当したのである。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Kazushige Igarashi: "La incorporacion de los llamados ganaderos de los llamos al Honrado Concejo en el siglo XVI." 『経済と経営』. 29・1. 101-114 (1998)
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[Publications] 五十嵐 一成: "フェリーぺ2世とその時代像の再構築のために" 『経済と経営』. 29・4. (1999)