1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610384
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
佐藤 清隆 明治大学, 文学部, 助教授 (90235333)
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Keywords | 酒場 / 居酒屋 / 浮浪者 / 騒擾 / ロンドン / 近世 / エリザベス朝 / 無秩序 |
Research Abstract |
本年度は、近世前期ロンドンの「秩序」と「無秩序」に関わる問題を、それらに関連する「浮浪」・「酒場」(居酒屋)・「騒擾」を中心に検討し、当時のロンドンで「安定の追求」がどのように行われていたのかという問題の一端にふれようとした。得られた知見は以下の通りである。 一つ目は「浮浪」である。ロンドン市当局は、浮浪者の急増に対して、16世紀半ば以降から、従来の鞭打ち刑や出身地への送還を中心とする政策に加え、貧民の就労化、強制徴募、流刑などの新たな政策も実施するようになった。二つ目は「酒場」である。ロンドン市当局は、エールハウスやタヴァーンなどの居酒屋急増のむかで、そこを「悪習や不正の温床」と見なすようになり、治安維持のために営業許可制を導入した。また、そこを浮浪者取締りのための定期的な捜査の対象ともするようになった。三つ目は「騒擾」である。ロンドンの騒擾は、発生件数がエリザベス朝後期から前期スチュアート朝期にかけて増大し、発生地域の中心もシティからロンドン市郊外に移るようになった。また、騒擾の特徴も国王役人への抗議など政治性の強い騒擾が発生するようになった。こうした状況に対応して、ロンドン市当局は憲兵隊長や民兵団を利用したり、警備回数を増やしたりして、その強化を図った。四つ目は、現場で直接治安維持に関わった役人たちについてである。これらの「無秩序」に直面して、ロンドン市当局や王権は、治安官をはじめとする地元役人の権限さえ冒すことになる、王権の息のかかった憲兵隊長が任命されるようになった。 明らかになったのは以上の諸点であるが、ロンドン市当局にとって、こうした治安維持のためのさまざまな施策が急務となった背後には、ロンドン市人口の急激な増大やそれに伴う郊外の発展があったのである。今後、これらの「無秩序」の問題と関連して、次の二点を考えていく必要がある。一つは若者問題であり、もう一つはロンドン郊外の問題である。これらの問題について、居酒屋の世界やそれに対する政策を中心に考えていきたい。
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Research Products
(1 results)