2000 Fiscal Year Annual Research Report
西夏文字資料による中国近世語史研究の可能性に関する基礎的研究
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10610439
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大塚 秀明 筑波大学, 現代語・現代文化学系, 助教授 (60168995)
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Keywords | 西夏文字 / 番漢合時掌中珠 / 雑字 / 中国近世語 |
Research Abstract |
最終年度にあたり,これまでの総括と将来の研究準備の一年であった。また啓蒙的な意味でシンポジウム(中国文化学会「西域と中国:異文化は中国に何をつたえたか」2000年6月24日,筑波大学にて)にパネラーとして参加し,西夏文字に見られる民族性について述べた。具体的な成果として,西夏文字文献の基礎資料である『番漢合時掌中珠』索引を充実させ全文の日本語への訳出を行い,その訳出過程で『掌中珠』の後半部分が本文と注釈語彙から構成されているとの仮説を得た。また『雑字』について西夏文献に限らず通時的な視野から"雑字"を書名にもつ資料を通覧しその過程で「姓」を巻頭に列挙する配列は他に類を見ない西夏資料の特異性であるとの結論を得ることができた。さらに近年韓国にて発見された旧本『老乞大』の複製公刊を機に字体を比較し『劉知遠諸宮調』などの中国近世語資料に見られる共通性を見いだすこともできた。3年間の研究期間を通し,西夏文字の理解が充分でないことを痛感し将来の研究者層を厚くするためにも西夏文字の研究解説書作成が急務であると思われた。そのひとつの試みとして,すでに手元には「西夏文字基本三百字」の草稿ができており,また図版を多用した「西夏文字資料概説」の解説編集も完成しているので将来の公刊に向けて研究を進めてゆきたい。またこれまで口頭発表したもの,また未発表の論考や索引資料なども公開して論文としてまとめることも将来の課題としたい。
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