2000 Fiscal Year Annual Research Report
モリエール劇団の演目についての分析的研究-17世紀フランス演劇への新しいアプローチ-
Project/Area Number |
10610490
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
秋山 伸子 松山大学, 経営学部, 助教授 (60279122)
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Keywords | モリエール / ピエール・コルネイユ / トマ・コルネイユ / スカロン / デマレ・ド・サン=ソルラン / ゲラン・ド・ブスカル / 『ジョドレ、あるいは主人ずらする召使』 / 『人間嫌い』 |
Research Abstract |
平成12年度は、過去2年間の資料収集と文献読解の成果を生かし、報告書の作成に専念した。報告書では、一六五九年の復活祭の休み明け以降劇団のメンバーとなったラ・グランジュが公演日の演目並びに興行収入の記録を残し始めた『帳簿』を手がかりとして、この時期以降のモリエール劇団の演目を調査した。これによって、当時の演劇の動向についての知識を獲得し、モリエールの戯作がどのような作家の作品の影響を受けたのかという問題について考察した。第一章では、モリエール劇団の興行記録を整理したが、これによって次の事実が明らかとなった。すなわち、劇団がパリで興行を始めた最初の数年間は数多くの戯曲を上演することで地歩を固めるという戦略を取ったが、それから約十年後の1669〜1670年の興行シーズンにおいては、劇団はモリエールの戯曲を専門に上演するようになったということである。第二章においては、コルネイユ兄弟の作品とモリエールの戯作との関係について論じた。なかでも突出した上演回数を誇るピエール・コルネイユの喜劇『嘘つき男』に用いられていた手法がたとえばモリエールの『人間嫌い』にどのように取り込まれているかなどについて分析を行った。第三章においては、スカロンの喜劇『ジョドレ、主人づらする召使』とモリエールの『滑稽な才女たち』の関連について指摘し、デマレ・ド・サン=ソルランの『真昼に夢見る人たち』やロトルーの悲劇『ヴァンセスラス』の一場面がそれぞれモリエールの『人間嫌い』のエリアントの名台詞(第二幕第四場)やセリメーヌとアルシノエの有名な対立の場面(第三幕第四場)の源泉のひとつであることを示した。第四章では、これらの演目とモリエール初期の二つの一幕ものの芝居(『滑稽な才女たち』と『スガナレル』)との関係についてさらに深く掘り下げて論じた。また巻末にラ・グランジュの『帳簿』抄訳を附した。
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[Publications] 秋山伸子: "宮廷バレエの世界"日仏美術学会会報. 19号. 73-75 (2000)
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[Publications] 秋山伸子: "モリエール全集 第1巻〜第5巻"臨川書店. 1815 (2000)
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[Publications] 秋山伸子: "モリエール全集 第6巻"臨川書店. 329 (2001)