1998 Fiscal Year Annual Research Report
古代ロシア文語萌芽期における動詞時制・アスペクト体系の研究
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10610512
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
服部 文昭 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (80228494)
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Keywords | 古代ロシア文語 / 古代教会スラヴ語 / 古ロシア語 / 時制 / アスペクト / ロシア語史 / 『アルハンゲリスク福音書』 / 『ムスチスラフ福音書』 |
Research Abstract |
古ロシア語の過去時制の体系については、多くの問題点が含まれている。その一つは、未完了過去についてのもので、今世紀初頭のソボレフスキー以来、この過去時制は古代教会スラヴ語から古ロシア語にもたらされた外来要素であるとされている。近年にいたって、アオリストも古ロシア語にとっては人為的な過去時制であるとの研究が相次いだ(80年代のイサチェンコ、ゴルシュコワとハブルガエフ、B.ウスペンスキーらの研究)。さらに、1995年に、ロシア科学アカデミー編の『古ロシア語文法:XII-XIII世紀』が出版され、これらの問題に関してこれまでの研究の総括的な概観が可能になった。 一方で、上記アカデミーの文法の書名からも分かるように、古代ロシア文語の萌芽期たる11世紀については、まだまだ研究が十分ではない。そこで、内外の言語学的な研究成果を整理し採りいれるとともに、『アルハンゲリスク福音書』(1092年成立)、『ムスチスラフ福音書』(1117年までには成立)といった文献の点検を行い、文献学的な知見を得るべく作業を続けている。来年度も、ほぼ同様の作業を行う予定だが、対象とする資料の選沢にもう少し意を用いてみたい。 なお、昨年平成10年12月4日に催されたシンポジウム「スラヴ語学文学研究の最前線-国際スラヴィスト会議の研究発表を中心に-」(主催:創価大学スラヴ東欧研究センター)において、「古代ロシア文語の統語論と語彙の資料としての『アルハンゲリスク福音書』」の題目で口頭発表を行った。
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