1999 Fiscal Year Annual Research Report
古代ロシア文語萌芽期における動詞時制・アクペクト体系の研究
Project/Area Number |
10610512
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
服部 文昭 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (80228494)
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Keywords | 古代ロシア文語 / 古代教会スラヴ語 / 古ロシア語 / 時制 / アスペクト / ロシア語史 / 『アルハンゲリスク福音書』 / 『ムスチスラフ福音書』 |
Research Abstract |
古ロシア語の過去時制の体系については、多くの問題点が含まれているが、ロシア科学アカデミー編の『古ロシア語文法:XII-XIII世紀』(1995年)が出版され、これら諸問題に関してこれまでの研究の総括的な概観が可能になった。一方で、上記アカデミー文法の書名からも分かるように、古代ロシア文語の萌芽期たる11世紀については、まだまだ研究が十分ではない。 そこで、昨年度来、内外の言語学的な研究成果を整理し採りいれるとともに、『アルハンゲリスク福音書』(1092年成立)、『ムスチスラフ福音書』(1117年までには成立)といった文献の点検を行い、文献学的な知見を得るべく作業を続けている。本年度も、ほぼ同様の作業を行ったが、その際、研究課題のもう一つのテーマであるアスペクト研究の視点からのアプローチも徐々に組み入れていった。この視点からの研究作業は、来年度前半の中心的な課題となるはずである。 アスペクト体系の通時的な研究においても、従来のスラブ語研究で中心的であった、ごく狭い意味での形態論的研究から、N.BermelやK.T.Holdenといった研究者らによる談話レベルでの論考が目に付くようになってきている。来年度は、このような言語学的な研究の流れを踏まえつつ、これまでに得た文献学的知見を整理して、研究報告書を纏め上げて行きたい。近年、ロシア語の通時的な研究においては、ひたすら抽象化を目指すような,ラングのみに目を向けたような研究よりは、それとやや距離をおいたアプローチが注目を集めつつある。しかしながら、どのようなアプローチを選ぶにせよ、11世紀末から12世紀前半という文語萌芽期にあたる時期の資料の文献学的研究が重要な鍵となることに間違いはない。
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