1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610535
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉武 純夫 名古屋大学, 文学部, 助教授 (70254729)
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Keywords | 婚礼 / 葬礼 / 死 / 自殺 / 女性 / 葬礼競技 |
Research Abstract |
1. ギリシア人の死の受容について根源的な一側面を究明するのに有益であると考えて、研究期間開始前から行っていた「イリアス」の葬礼競技におけるアキレウスの賞品供与についての研究を区切りのつくところまで続け論文にまとめた。アキレウスの死欲求(生の放棄)は、絶望した者が所有物を物理的に放棄しようとする傾向と繋がっているものであることを示した。 2. 女性と死の近接性については、情報を4つの側面に整理した。(1)女性が一見わけもなく死を欲することが多いと見做されていたことのほかに、(2)葬礼と婚礼の共通性、deflorationが屡々死に譬えられたこと、嫁取りと誘拐のイメージが並置されたことから概念的に、また、(3)葬礼においては専ら女性が死体に接触することになっていたことから物理的に、また、(4)男性にとっては過多な出血を女性は出産時に経験することから生理学的に、古代ギリシアの女性は死と近しい存在であったということができる。 3. 首吊りは、男性より女性に、既婚女性より乙女に似つかわしい自殺方法であったというのはある意味では正しい。しかし文学においては男性には僅少というわけでもなかった。またrapeを逃れる乙女が首吊り自殺をするという話は比較的新しいモチーフであり、古典期における「ヒッポリュスト」のパイドラの首吊りがその伝統に基づいたものとする考えは誤りである。これらの判断をもとに現在「アンティゴネ」と「ヒッポリュトス」についての論考を進めている。 4. 刀による女性の自殺、女性の人身御供の受容についても、上記2の知見をもとにして、N.Lorauxの先行研究を批判・補足しながらもうしばらく女性の問題について研究を続ける必要がある。
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Research Products
(1 results)