1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10620027
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大沼 保昭 東京大学, 法学政治学研究科, 教授 (50009825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新田 一郎 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 助教授 (40208252)
能登路 雅子 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (70164712)
西垣 通 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (90189275)
渡辺 浩 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (10009821)
油井 大三郎 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (50062021)
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Keywords | 国際公共性 / 文化帝国主義 / 文際的人権論 / アメリカニズム / 公と私 / グローバリゼーション |
Research Abstract |
1. 各分担者が進めている個別研究の多くはいまだ進行途上にあるが、中間的な成果の一部は研究会において報告・討論された。以下、研究会における報告の重要な点を摘記する。 2 (1) 大沼保昭は、現代世界において「国際公共価値」の中核に置かれる「人権」評価とそれが惹起する問題を取り上げ、現在用いられている様々な評価方法に詳細な検討を加えた結果、そこに介在する様々な政治的・文化的バイアスを相対化する「文際的」視点の必要性を提唱した。これは本研究の中核的な視座となる。 (2) 藤原帰一は、「民主主義国同士は戦争をしない」というテーゼをめぐる議論を整理し、冷戦の終結によって戦争の方式とその規律に根本的な変化が生じたことを指摘した。この指摘は、冷戦後の世界では、戦争をめぐる諸言説の「公共的」存立の条件が問題とされなければならない、とする認識へ結びつく。 (3) 「文際的」視点から「国際公共性」を論ずるためには、「公共性」という観念の持つ文化的バイアスを測定する必要がある、との認識から、渡辺浩は、西欧の「public/private」、中国の「公/私」、日本の「おほやけ/わたくし」という、相互に混同されがちな概念対の差異を歴史的視点から明らかにした。 (4) 渡辺の報告をうけて新田一郎は、「おほやけ/わたくし」の対の生成に至る歴史的経緯を検討し、この対は日本社会の具体的な構造に固着して観念されたことを示し、そのことが、世界の存立を語る「物語」の具体性と密接に関連し、抽象的な原理を軸として構築される西欧近代的世界と対照をなすこと、を指摘した。 3. 以上の成果から、文化的バイアスを相対化して「国際公共性」問題を論ずるいとぐちが得られた。これを踏まえて西欧的「普遍」の存立を問い、実践的な提言へと結びつけることが、次年度の重要な課題となる。
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Research Products
(11 results)
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[Publications] 大沼 保昭: "文際的人権論の構築へ向けて-欧米中心的人権観の克服による人権の普遍化-" 国家学会雑誌. 111-3・4 9・10 11・12. 1-74 1-57 1-78 (1998)
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[Publications] 油井 大三郎: "戦争の記憶と歴史の壁" 義江彰夫他編『歴史の対位法』(東京大学出版会). 245-259 (1998)
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[Publications] 油井 大三郎: "アジア系移民の排斥と統合" 増谷秀樹他編『越境する文化と国民統合』(東京大学出版会). 37-55 (1998)
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[Publications] 藤原 帰一: "ナショナリズム・冷戦・開発-戦後東南アジアにおける国民国家の理念と制度-" 東京大学社会科学研究所編『20世紀システム』. 4. 76-111 (1998)
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[Publications] 藤原 帰一: "冷戦の終わりかた-合意による平和から力の平和へ-" 東京大学社会科学研究所編『20世紀システム』. 6. 273-308 (1998)
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[Publications] 藤原 帰一: "ヘゲモニーとネットワーク-国際政治における秩序形成の条件について-" 東京大学社会科学研究所編『20世紀システム』. 6. 309-339 (1998)
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[Publications] Toru Nishigaki: "The Impact of the Information Age" Asia-Pacific Review. 5-2. 27-35 (1998)
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[Publications] Toru Nishigaki: "A Global Electric Community : From the Fifth-Generation Computers to the Internet" Social Science Japan Journal. 1-2. 217-232 (1998)
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[Publications] Daisaburo Yui: "American Studies and Cultural Fusion between East and West" Japan Center for Area Studies News. 4. 1 (1998)
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[Publications] 大沼 保昭: "人権・国家・文明-普遍主義的人権観から文際的人権観へ-" 筑摩書房, 404 (1998)
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[Publications] 油井 大三郎(共著): "第二次世界大戦から米ソ対立へ" 中央公論社, 414 (1998)