1999 Fiscal Year Annual Research Report
国際司法裁判における少数意見-判決の形成に及ぼすその影響の分析-
Project/Area Number |
10620028
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
杉原 高嶺 京都大学, 大学院・法学研究科, 教授 (30004154)
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Keywords | 国際司法裁判所 / 常設国際司法裁判所 / 少数意見 / 反対意見 / 個別意見 / 判決 / 裁判の評決 |
Research Abstract |
本研究は、国際司法裁判所の判決(または勧告的意見)に付される裁判官の少数意見が当該判決の形成にどのような影響を与えるかを、具体的な裁判例に即して実証付に検討することを目的とする。 昨年度は次の二点の研究を行った。第1は、国際司法裁判に少数意見制が採用された経緯である。調査の結果、この制度の導入には根強い抵抗があったことが判明した。その主たる理由は、少数意見による判決批判を許し、ひいては判決の権威を害することになる、ということである。この反対論は、特に大陸法系の法律家に根強かった。第2は、少数意見の実際上の意義ないし機能である。調査の結果、それは次の3点にまとめることができた。(1)少数意見の国際法の発展機能、(2)判決内容の明確化機能、(3)判決内容の質的向上の機能である。これらは、国際司法裁判所の実際の判例に照して確認することができる。 本年度は、少数意見の現状における問題点を、特に戦前の常設国際司法裁判所時代との対比において検討した。その結果、現裁判所における問題点として次の2点が指摘される。第1は、少数意見の増大現象、すなわち、1つの判決に長文の意見が多数付されていることである(本数の増大と意見の長文化)。第2は、判決の批判・非難を主眼とする少数意見が増えていることである。特に後者は、現裁判所の大きな問題点といえる。それが逆に判決の長文化を招くだけでなく、判決そのものの権威を毀損する恐れがあるからである。これらの問題点は、結局、少数意見とは何か、という根本問題を提起しているといえる。この制度の導入趣旨に照して、制度の内在的制約が再認識される必要に迫られている。 以上の研究成果をさらに判例によって精査したうえで、最終稿をとりまとめるつもりである。
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