1998 Fiscal Year Annual Research Report
イスラム政権下におけるイランの工業化政策とその限界
Project/Area Number |
10630031
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
館山 豊 茨城大学, 人文学部, 教授 (60116621)
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Keywords | イラン / 工業化 / 革命 / 分配国家 / イスラム |
Research Abstract |
本年度の研究では、イランのような石油依存型神権国家では、普通の途上国と比べて工業化に困難がともなうことを、企業レベルの分析をとおして明らかにしようとした。調査対象としては国営鉄鋼所と国営自動車会社を各1社を抽出した。両者ともそれぞれ日本企業と技術提携している。 提携先日本企業からの聞き取り調査の結果、両者とも、熟練労働力の不足はさておき、特に経営能力に大きな問題のあることが分かった。企業家精神の欠如、相互不信から生じる情報の偏在、徹底しない上意下達などの問題点のほかに、安全性、品質、納期などにたいする無頓着、また製造原価等を把握していないために、合理化、効率化の意味が理解できないなどの問題を抱えている。 それでも鉄鋼所の場合、日本企業の4年間にわたる技術指導の結果、経営組織上の問題もかなり改善し、業績は飛躍的に向上した。それはイラン工業化の可能性の一端をうかがわせるが、しかし西欧文明を拒否する神権国家は鎖国を国是としているので、鉄鋼のようなケースはまれである。現に日本企業の関与の仕方が薄い自動車会社は稼働率がさっぱりあがらない。 上のような経営組織上の問題点がイランの分配国家的側面によって助長されているのか、それとも最近の民営化によって改善されているのかは次年度の研究課題となる。なお研究の過程でイランの工業化を理解するうえで前提となる国営企業体制の分析がなによりも肝要であると考え、イラン革命後の公企業体制についての論文を書いた。そこで明らかにしたことは、革命後、相当広範囲におこなわれた国有化は、インドなどのそれと異なり、工業化を志向したものではなく、民間資本の自由な行動を狭い枠のなかに抑え込むことを目的としたものであったという点である。そこにも革命後の生産国家的側面にたいする分配国家的側面の優位がみてとれる。
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Research Products
(1 results)