1998 Fiscal Year Annual Research Report
国際石油供給に対するイスラム原理主義運動台頭の影響
Project/Area Number |
10630036
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
岩崎 徹也 信州大学, 経済学部, 助教授 (10262677)
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Keywords | 石油価格 / 石油需給 |
Research Abstract |
平成10年度における聞き取り調査、文献調査の結果、石油需給・価格見通しの変化が明らかとなった。従来は、低価格が続くと石油需要が促進される一方石油開発への投資が抑制され、中長期的には需給が逼迫、価格は上昇する。投資は高コストの非OPEC地域で一層抑制されるので、シェアが拡大したOPEC(石油輸出国機構)の価格支配力は回復する。OPECの中でも政治的に不安定な中東地域のシェアが上がるので供給途絶の可能性も高まるという考えが支配的であった。ところが、石油価格の低迷の中、石油会社は石油の探査・開発・生産部門における徹底したコスト削減を行ってきた。技術的には、探査の精度を向上させ無駄な油井掘削を抑える三次元地震探査、採算性の低かった薄い油層からの回収率を引き上げる水平掘削、海底油田生産のための巨大鉄鋼構造物が不要な浮遊式生産システムなどが急速に導入されている。また、既存施設の最大限利用、リストラ、アウトソーシングなどによる減量も当然ながら行われている。一方、従来、資源ナショナリズムの強かった発展途上国や旧ソ連圏においては、資金難から外資導入が進展、また、英国等先進国では国内産業・雇用保護、エネルギー供給確保等の面から、石油開発・生産に対する税制上の優遇など支援策が強化されている。これらの結果、非OPEC地域の石油生産は予想以上に健闘してきた。今後、低価格が続いても、同様の理由で非OPECの生産は減少しない。価格が上昇すると、需要が減少するうえ、非OPECの石油開発が促進される。結局、OPECの生産はあまり増加せず、現在同様、産油国の財政難から増産圧力が働き、需給は緩和するので、今後とも価格は安定する。というのが、『石油の新しい通説』になりつつある。
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