2000 Fiscal Year Annual Research Report
国際石油供給に対するイスラム原理主義運動台頭の影響
Project/Area Number |
10630036
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
岩崎 徹也 信州大学, 経済学部, 教授 (10262677)
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Keywords | 石油価格 / 石油需給 / 経済開発 / イスラム原理主義 / 発展途上国 |
Research Abstract |
平成12年度の聞き取り調査及び文献調査において以下の点が明らかとなった。 2000年に入っても原油価格の上昇は続き、ウェスト・テキサス・インターミーディエイト(WTI)原油は9月にはバレル当り37ドル程度にまで上昇していたが、11月半ばから下降局面に入り、12月には25ドル程度に下落した。 もともと原油需給はそれほど逼迫していたわけではなく、主として、米国における精製能力不足、製品備蓄水準の低下等に対する先物市場の過剰反応が価格騰貴を引き起こしていたという面も強い。米国の株式市況低下・消費減退などにより製品需給も緩み、原油価格の低下をもたらした。米国の株価低落はIT革命に対する過剰期待によるバブルがはじけたという面も強い。とはいえ、ITにより米国経済の底力は強化されており、深刻なリセッションに陥る可能性は小さいという説も強い。だが、米国の景気の急切れは、わが国を含むアジアや欧州の景気にも悪影響を与えており、石油需要は減速する可能性が強い。 価格騰貴に増産で応えていたOPEC(石油輸出国機構)も、一転、減産による価格防衛の姿勢を強めている。産油国は長期の石油価格低迷期に経済不振を続け、人口増加による雇用問題の深刻化から、イスラム原理主義などの反体制勢力も台頭しており、大幅な価格下落は受け入れがたいという状況にある。とはいえ、価格の高止まりは消費国経済に打撃を与え、石油需要の低下をもたらす可能性もある。OPEC加盟国間の団結は、価格低下への恐怖と主要産油国であるサウジアラビア、イランの協調により、強まっているといっていい。ただ、サウジアラビアと協調姿勢を続けるイランのハタミ政権は、保守派からの攻撃にさらされており、主要財政基盤であり経済基盤である石油収入の低下により、保守派の勢力が一層強まる可能性もある。
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Research Products
(2 results)