2001 Fiscal Year Annual Research Report
国際石油供給に対するイスラム原理主義運動台頭の影響
Project/Area Number |
10630036
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Research Institution | SHINSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
岩崎 徹也 信州大学, 経済学部, 教授 (10262677)
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Keywords | イスラム原理主義 |
Research Abstract |
2000年平均で27.60ドル/バレルであった原油価格(OPECバスケット)は、米国の景気後退などの影響もあり、2001年には下落した。9月の米国同時多発テロ及びその後のアフガニスタン攻撃で高騰するとの予測もあったが、戦闘が局地的であったこともあり、10月以降、20ドルを割り込み、11月には17・69ドルにまで低下した。OPECの減産などもあり、若干持ち直すも、2002年1月でも18.39ドルにすぎない。 米国同時多発テロの真相は不明であるが、ウサマ・ビン・ラディン氏の率いるアル・カーイダなどのイスラム原理主義過激派の世界的ネットワークが、米国をテロの標的としていたことは事実であり、アラブ・イスラム世界に台頭する原理主義勢力が、穏健派を含め、反米的であることも事実である。 反米意識の背景には、パレスチナ問題をめぐる米国のイスラエルよりの姿勢やメッカ、メジナを擁するサウジアラビアでの米軍の駐留等の他に、米国及び米系多国籍企業の主導するグローバリゼーションへの反発がある。それは、米国・企業が世界を支配し、「腐敗した」米国的価値をイスラム世界への押し付けるものだと考えられている。 中東・イスラム諸国は、東アジア諸国のように多国籍企業に依存した輸出指向型の開発が困難であり、国内開発・工業化が進展しない中、人口爆発の結果、若年層を中心に雇用問題が深刻化している。そうした中、米国が支配する(と考えられている)IMF等の主導する構造調整は、市場経済化を進展させ、社会格差を拡大しているとの反発もあり、これが、反米意識の高まり、ひいては、過激派の暴走を是認する空気を一部にもたらしているのである。 このような社会経済的問題の解決なしには、個別テロ組織の壊滅によっても、中東地域の安定はもたらされないし、中長期的な石油供給の安定にもつながらない。
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Research Products
(1 results)