1999 Fiscal Year Annual Research Report
戦後「福祉国家」のアンチテーゼとしてのシチズンインカム論の総合的検討
Project/Area Number |
10630050
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
小沢 修司 京都府立大学, 福祉社会学部, 教授 (80152479)
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Keywords | 福祉国家 / 最低所得保障 / シチズン・インカム / ベーシック・インカム / 負の所得税 / 参加所得 / 社会配当 |
Research Abstract |
交付申請書に記載した本年度の研究実施計画は、シチズン・インカム(ベーシック・インカム、以下BIと略する)に関する文献資料収集と論点整理、関係する研究者との意見交換、学会発表と論文執筆であったが、これにもとづいて概ね順調に研究を遂行しその成果の一部を日本財政学会第56回大会(1999年10月22-24日;島根大学)にて「アンチ『福祉国家』の租税=社会保障政策論〜ベーシック・インカム構想の新展開〜」という題目で報告した。 具体的な研究成果としては、最低所得保障構想としてのBI提案を、その類似の提案である負の所得税、社会配当、参加所得などと比較検討を行い、BIに対する政治的思想的スタンスの違いから生じる受容の差がそれら負の所得税、社会配当、参加所得という別個の形をとった(BIの)修正バージョンを生み出すこととなっていること、具体的には負の所得税はフリードマンなど急進的右翼や自由主義者が好むBIの姿であり、社会配当はローマーなど社会主義者(市場社会主義者を含む)が好む姿、そして近年アトキンスンが提唱している参加所得は福祉集産主義者が好む形であることを明らかにした。こうして、自由主義者から社会主義者まで、さらにはエコロジストやフェミニストまでを含めた広範な人々から関心を集めて真剣に議論されているBI構想は、今後の21世紀における人間の福祉の実現を図る新しい社会経済システムのあり方をグランドデザインする際に欠かすことのできない重要な検討素材となると考える。 なお、本報告をベースにした論文は、本年6月に刊行予定の『福祉社会研究』創刊号に掲載されることとなっている。
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