1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10640315
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
若林 淳一 中央大学, 理工学部, 教授 (30129225)
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Keywords | 整数量子ホール効果 / 磁場分布 / スピン分離 / ランダウ準位 / 温度依存性 |
Research Abstract |
本年度の主な課題は,異なる磁場分布における電子スピンに依存したホール抵抗の温度依存性を調べることであった.まず,高温超伝導体が第2種超伝導体で磁化にヒステリシスがあることを利用して,磁場の掃引方向を反対にし,磁場分布を反転して測定することを試みた.その結果,低移動度の試料において,スピン分離は不十分ながら,温度依存性の電子スピン依存性が逆転することが観測された.すなわち,磁場増加中のときにはスピン↓のランダウ準位の温度依存性が顕著なのに対して,磁場減少中ではスピン↑のランダウ準位の温度依存が顕著に現れた.同様の測定を高移動度試料についても行った.しかし,磁場の反転分布を作るため,いったん高磁場にしたときに高温超伝導体の破壊が生じ,測定することができなかった.その後,同様の測定を試みているが,現在までのところ高移動度試料についてはデータは得られていない.この測定は,低磁場で十分なスピン分離が必要なので,高移動度・低電子濃度の試料で行う必要がある. 次に,異なる磁場分布を作る第二の方法として,Niを試料の端領域に真空蒸着した試料を作製した.Niの強磁性により,端領域のみ印加磁場より強い磁場を生成することができる.この試料を用いて,ランダウ準位(1↓)について温度依存性の測定を行ったところ,超伝導体を用いた場合と同様の,温度の上昇にともなうホール抵抗の高磁場側へのシフトが観測された.これにより,この温度依存性には磁場に分布があることが本質的であり,これと電流密度分布の温度依存性がこの現象の原因であることが明確になった.
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