不均一磁場中の2次元電子状態に関する理論的研究-新しいスケーリング解析によるアプローチ-

1998 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10640321
• Research Institution: Hokkaido University
• Principal Investigator: 矢久保 考介 北海道大学, 大学院工学研究科, 助教授 (40200480)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 中山 恒義 北海道大学, 大学院工学研究科, 教授 (80002236)
• Keywords: 強制振動子法 / スーパー・コンピュータ / 大規模行列 / 応答関数 / 久保公式

Research Abstract

空間的に不均一な磁場が印加されている2次元電子系の量子状態に関して、最近精力的な研究が行われているが、多くの問題が未解決のまま残されている。この問題は極めて基本的であり、この系の電子状態および電子輸送を明らかにすることは急務の問題となっている。本研究では、臨海波動関数のマルチフラクタル性に着目した新しい有限サイズ・スケーリングの方法を用いて、有限平均磁場を有するランダム磁場下の2次元電子状態を調べ、非局在転移のユニバーサリティ・クラス、弱磁場極限における非局在状態の行方を調べた。研究ではまず、平均磁場がランダム磁場よりも強く印可されている正方格子上の電子のエネルギー固有状態を強制振動子法により計算した。計算された波動関数に対してボックス・サイズを変えたボックス・カウンティングによりq次のモーメントを求めた。この計算は申請備品であるワークステーションを用いて行われた。次に、q次モーメントに対する有限サイズ・スケーリング解析を行うことにより、局在長およびq次のモーメントのフラクタル次元を求めた。スケーリング解析の結果、この系には非局在転移があり、そのユニバーサリティ・クラスは量子ホール系のものと一致することが明らかになった。この結果は、準古典近似であるHuckesteinの理論と一致している。さらに、平均磁場の大きさをその周りの揺らぎよりも弱くすると、ランダウ準位間のミキシングにより非局在状態のエネルギーがバンド中心に向かって上昇することがわかった。この効果は、ゼロ平均磁場下の電子状態が全エネルギーで局在していることを示唆している。

Research Products

• [Publications] K.Yakubo and M.Ono: "Finite-size scaling of multifractal wave functions : The metal-insulator transition in two-dimensional symplectic systems" Physical Review B. 58. 9767-9772 (1998)
• [Publications] K.Yakubo: "Transfer matrix method for a dynamical mesoscopic system" Physical Review E. 57. 3602-3610 (1998)