1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10640365
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
佐藤 信一 静岡大学, 理学部, 助教授 (30196240)
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Keywords | パターン形成 / 自己アファイン / Edenモデル / エントロピー / 力学系 |
Research Abstract |
成長するパターンの統計力学を構築するために,自己アファイン性をもつ成長界面を生成する典型的な例であるEdenモデルについて,異なる初期クラスターから定常的な成長状態に至る界面の時間発展の計算機シュミレーションを行った。初期クラスターからの時間発展は,モデルの成長規則が確率的に定められているために一意的には決められない。そこで,固定した初期クラスターからの時間発展のアンサンブル平均を取り初期クラスターからの最も確からしい成長経路を定めて,その成長経路を位相空間内の軌道とみなすことにより力学系を定義した。具体的には,成長界面の長さのアンサンブル平均を計算し,多くのサンプルの中から平均と大きく異なるクラスターを選びそれを初期クラスターとする。それらのクラスターから成長経路のアンサンブル平均を数値計算で求め,力学系の軌道とした。数値計算の結果から,2次元正方格子上の周期的境界条件を課したモデルにおいて成長界面が少数自由度の力学系で記述可能なことを見出した。これらの成果は1998年10月の物理学界において発表された。周期的境界条件の場合には定常的成長状態は力学系の固定点に対応し,固定点における線形作用素の固有値と固有ベクトルを数値的に評価することにより,成長するパターンの安定性の定量的評価が可能となった。更に,力学系モデルにランダムノイズを取り入れたランジュバン方程式型のモデルを考えることにより,定常成長のまわりでの成長界面の長さのゆらぎの確率分布も取り扱いが可能となる。これらの成果から成長するパターンの統計力学に対する展望が開けた。
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