Research Abstract |
前年度に引き続き,太陽活動周期の上昇期から極大期に及ぶ1997-1999年に発生したCMEに伴う惑星間空間衝撃波の伝播特性を調べた.主なデータ源は,人工衛星や電波シンチレーション観測によって得られた太陽風データと,「ようこう」やSOHOなどの太陽観測衛星によって得られたコロナ画像である.この研究によって明らかになったことは,CMEの発生・伝播において,コロナ・太陽風における磁気中性面の役割が本質的に重要である,という点である.CMEを発生させる要因は,コロナ磁場に蓄えられた磁場のエネルギーであることは,以前より指摘されているが,解析を行った期間におけるCMEの殆どが,磁気中性面の下部に形成されるストリーマー・ベルトで発生していることから,何らかの形でストリーマ・ベルトの磁場のフリー・エネルギーが蓄積されていることが考えられる.その蓄積がどのような形で行われているかを見るため,「ようこう」による軟X線コロナ画像により,大きなプロミネンス爆発が発生した場所を数太陽回転にわたって追跡したところ,磁場構造の複雑化に伴って,ポテンシャル磁場を仮定して計算した磁場構造に対して,軟X線コロナ・ループがなす角度が次第に大きくなり,ポロミネンス爆発(CME発生)のあと,磁場構造が単純化するとともに,この角度も減少し,エネルギー状態に変化が起きた例がいくつか見られた.しかし磁場構造の複雑化に伴って,どのよなプロセスでフリー・エネルギーが蓄積されるかについては,はっきりした結論は得られなかった.CMEの形状と磁気中性面との関係については,前年度の研究において磁気中性面が惑星間空間衝撃波の伝播に対して,磁気中性面の方向に低速度の部分が形成されたり,惑星間空間衝撃波の広がりを制限することが示されたが,その後の研究により,CMEの一見複雑に見える構造は,コロナ中のsource surface近辺の磁気中性面に沿って,CMEが形成されていることが明らかとなり,磁気中性面はCMEの発生源となると同時に,CMEや惑星間空間衝撃波の伝搬特性を規制する,という複雑な役割を持っていることが分かった.この研究成果は米国地球物理学会,地球電磁気・地球惑星圏学会を初め,各種研究集会で発表された.
|