1998 Fiscal Year Annual Research Report
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10640442
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
武藤 鉄司 長崎大学, 環境科学部, 助教授 (70212248)
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Keywords | シークウェンス / シークウェンス層序学 / 海岸線自動後退理論 / デルタ / 水路実験 / 海水準変動 / 堆積物供給速度 / 海岸線移動軌跡 |
Research Abstract |
シークウェンス層序学の基礎に関わる理論的枠組み-海岸線の自動後退理論(Theory of Shoreline Autore-treat)-を検証するための水路実験装置をセットアップするとともに検証作業を実行した。実験装置は、(1)透明アクリル水槽(長さ2m×幅1m×深さ0.7m)、(2)貯水槽(1000リットル)、(3)コンピュータ接続の流量制御システム、(4)2次元デルタ観察キット(高側壁で幅狭の開水路)、(5)砂粒供給キット、で構成される。(1)-(3)は西日本流体技研社製、(4)-(5)は研究代表者による製作である。本体主部の透明アクリル水槽はいわば「海」を擬したもので、電磁パルプを組み込んだ流量制御システムによって「海面」上昇速度を精度よく(誤差<<1%)コントロールすることができた。この実験装置を使用し、55通りの異なる設定条件(ただし海水準上昇速度一定、堆積物供給速度一定)のもとで2次元デルタの生成実験を行ってみたところ、以下のような結果を得た。 (1) 水路内に生成された二次元デルタの海岸線の挙動は、いずれの設定条件においても、自動後退理論から予測される移動軌跡(shoreline trajectory)とほぼ合致した。すなわち、デルタ海岸線は海上準上昇の早期には前進するが、まもなく陸側への後退に転じることが確かめられた。 (2) 特定の地形条件(自製開水路の勾配)のもとでは、デルタ海岸線の後退過程において、デルタフロントの地形が失われる時点を必然的に迎えることが分かった。これも自動後退理論が予言するとおりである。 以上の研究成果の一部は、国際学術雑誌へ投稿済みの2編(いずれも現在査読中)を含めて計5編の論文としてまとめ終えている。また、他の一部については米国地質学会1999年年会(1999年10月、デンバー)で発表する準備を進めている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 武藤鉄司: "海進・海退を考える:相対的海水準上昇パターンの復元" 堆積学研究. 47号. 83-93 (1998)
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[Publications] 武藤鉄司: "海岸線自動後退理論と平衡説の統合的理解" 堆積学研究会1998年春季研究集会講演要旨. 9-10 (1998)
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[Publications] 武藤鉄司: "長崎大学環境科学部の堆積実験水槽マルジ2号" 堆積学研究. 49号(印刷中). (1999)