2000 Fiscal Year Annual Research Report
寄主植物の遺伝的多様性が食葉性昆虫群集に与える影響
Project/Area Number |
10640615
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 宏明 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (20196265)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 正人 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 教授 (30091440)
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Keywords | 遺伝的多様性 / 昆虫群集 / Quercus / 潜葉性昆虫 / 寄主植物 / 雑種 / Phyllonorycter / ヤママユ |
Research Abstract |
1 北海道石狩浜のカシワ林における過去3年間の調査の結果、潜葉性昆虫の食害を受けやすさに個体変異があることが明らかになった。しかし、どういった形質を持つ個体が食害を受けやすいかについてはまだはっきりしない。 2 石狩浜のカシワ・ミズナラ混交林の120個体について、形質測定に基づく多変量解析を行うと共にPhyllonorycter属の種構成を調べ、以下の結果を得た。 (1)カシワとミズナラの中間形質を有するものが11個体認められた。 (2)カシワには2種、ミズナラには7種のPhyllonorycter属が特異的に寄生していたが、中間形質を示した11個体のうち4個体には、カシワに特異的な種とミズナラに特異的な種の両方が寄生していた。 (3)現在、樹木のどのような形質がPhyllonorycter属の食樹選好性に影響を及ぼしているのか解析中である。 3 クヌギ林の陽葉と陰葉をヤママユ幼虫に与え、その成長過程を比較し、以下の結果を得た。 (1)陰葉より陽葉に選好性を示す。 (2)陽葉では陰葉に比べ、湿重での成長率は高いが、乾重での成長率は低い。 (3)陰葉では陽葉に比べ、繭の形成が著しく不完全である。 4 奈良県春日山裏のクヌギ林にて上層と下層におけるPhyllonorycter属の分布密度と死亡要因を6月に精査し、以下の結果を得た。 (1)Phyllonorycter属の分布密度は,面積当たり,葉1枚当たりいずれも下層で有意に高い。 (2)Phyllonorycter属の死亡率は上層と下層では有意な差はないが、寄生による死亡率は上層で下層より有意に低い。 5 Phyllonorycter acutissimaeの1令幼虫を23℃で飼育し、4令になった直後に28、31、34℃で24時間飼育したのち23℃に戻して飼育を続け、23℃のままで飼育した個体とで蛹湿重量を比較したところ、温度が高くなるほど蛹重量が有意に減少した。
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