2001 Fiscal Year Annual Research Report
寄主植物の遺伝的多様性が食葉性昆虫群集に与える影響
Project/Area Number |
10640615
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 宏明 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (20196265)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 正人 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 教授 (30091440)
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Keywords | 寄主植物 / 食葉性昆虫 / 潜葉性昆虫 / ヤママユ / 成長 / クヌギ / 個体群動態 / 密度依存性 |
Research Abstract |
1 石狩浜カシワ林での潜葉性小蛾類の1997年から2001年にわたる個体群動態を解析したところ、以下の結果を得た。 (1)各年の夏世代の密度と秋世代の密度の間には有意な相関がみられたが、ある年の秋世代の密度と次の年の夏世代の密度の間には相関はみとめられなかった。すなわち、秋世代の密度はその年の夏世代の密度に依存するが、夏世代の密度は前年の秋世代の密度とは独立の関係にあると言える。 (2)世代間での密度の増加率と密度の相関では、夏世代から秋世代にかけては増加率は強い密度依存を示したが、秋世代から次の年の夏世代への増加率はそれほど強い密度依存を示さなかった。 (3)幼虫初期の死亡率は密度と相関せず、この時期の死亡は気象条件など非密度依存的要因であることを示唆している。 2 昨年に続き、クヌギの陽葉と陰葉をヤママユ幼虫に与え、その成長過程をより厳密に比較したところ、以下の結果を得た。 (1)陽葉を与えて飼育した幼虫は雄雌ともに、陰葉を与えたものよりも、湿重量では軽かったが、蛹乾燥重量では有意に重く、相対成長率が高かった。 (2)幼虫の成長日数には、雄雌ともに陽葉と陰葉の間で有意差は認められなかった。 (3)これらの結果は、含水率の高い陰葉を摂食した幼虫は水分過剰、いわゆる水ぶくれの状態にあること、窒素含有率の高い陽葉は陰葉より餌としての質が優れていることを示唆している。 (4)幼虫が摂食した葉の乾燥重量は、陰葉を与えた幼虫の方が陽葉を与えた幼虫よりも多かった。陰葉では水分や非栄養成分による窒素の希釈に対して、ヤママユ幼虫は摂食量を増加することにより、窒素の不足分の補償をしていると考えられた。
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