1999 Fiscal Year Annual Research Report
シャジク藻節間細胞の濃厚K塩溶液中でのイオン調節能喪失の細胞生理学的研究
Project/Area Number |
10640632
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
清沢 桂太郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 助手 (40029509)
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Keywords | 炭酸カルシウム / リン酸カルシウム / 細胞膜 / Chara coralling / 電気的中性 / 電荷分離 / 膜電位 / 能動輸送 |
Research Abstract |
シャジク藻の細胞膜の機能と構造を安定に保つうえで、Ca^<2+>が必要であることと、細胞壁に存在するCa^<2+>が濃厚KCl水溶液中で遊離することが筆者等の研究で分かっていた。今回交付された科学研究費では、これらの問題を中心に以下の三つの課題が研究され、明らかにされた。(1)シャジク藻細胞壁からのCa^<2+>の遊離は、細胞壁中の炭酸カルシウムに由来すると考えられてきたが、本当に炭酸カルシウムだけからかどうか。(2)細胞膜を介して、膜電位差と濃度差のもとで行われるイオンの輸送現象の基礎にある、電気的中性の法則の理論的基礎を明らかにすること。この課題はさらに二つの問題に分けて、論じられた。その一は、膜電位が発生するのは、陽イオンと陰イオンが電荷分離するためであるが、これは「電解質溶液中では、陽イオンに由来する陽電荷の総量は、陰イオンに由来する陰電荷の総量に等しい」という電気的中性の法則と表面的には矛盾する。実際にそうであるかどうか。第二の問題は、細胞膜での能動輸送では、ある特定のイオンが単独で、その濃度変化が測定できるほど輸送できると考えられてきたが、電気的中性の法則からそのようなことが許されるのかどうか。(1)の課題との関係では、リン酸カルシウムと、未だ同定されていない酸性物質が、炭酸カルシウムと同時に遊離することが、明らかにされた。(2-i)の課題との関係では、膜電位の発生には陽イオンと陰イオンの電荷分離によるイオン分布のアンバランスが必要であるが、その電荷分離は電気的中性が保たれていると見なしてよいほどわずかなアンバランスでよいことが理論的に論証された。(2-ii)の課題との関係では、いくら能動輸送という機構によっても、ある特定のイオン種が単独で、その濃度変化が検出できるほど、輸送されることはないことが、理論的に論証された。
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