1998 Fiscal Year Annual Research Report
二形性(酵母型・菌糸型変換)を制御する遺伝子群の解明
Project/Area Number |
10640650
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
鈴木 孝仁 奈良女子大学, 理学部, 教授 (60144135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上原 悌次郎 大阪体育大学, 体育学部, 教授 (90025982)
岩口 伸一 奈良女子大学, 理学部, 講師 (40263420)
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Keywords | 酵母 / Candida tropicalis / 二形性 / 菌糸形成 / エタノール / サブトラクション法 / チアミン / nmt1 遺伝子 |
Research Abstract |
酵母C.tropicalis Pk233株は、エタノール添加培養で菌糸を形成する。エタノール添加培養と無添加の酵母型培養との間での遺伝子発現の差異に基づくサブトラクション法によって、この菌糸形成に特異的な遺伝子群を単離した結果、分裂酵母nmtl^+のホモログが分離された。分裂酵母では、遺伝子nmtl^+の産物はチアミンの生合成と細胞外からのチアミンの透過などのチアミン代謝を制御していること、nmtl^+の遺伝子発現は、培地にチアミンを添加すると抑制されることが知られている。そこで、エタノール添加培養における菌糸形成において、チアミンがどのようなはたらきをしているのかを知るため、チアミン添加による菌糸形成への影響を調べた。培養には平成10年度に申請し購入した、空冷式恒温振とう培養機を使用した。 エタノール添加培養における菌糸形成過程は、酵母細胞が膨張して大型球形の細胞に変形して細胞極性が失われ、娘細胞の分離が起こらなくなる第1期と、その後菌糸が伸長する第2期に分けられる。nmtl^+ホモログの発現をノーザン解析によって調べたところ、エタノール添加培養では第1期後半から第2期前半までに発現量が高いこと、さらにチアミンを培地に添加するとnmtl^+ホモログの発現が抑制されることも判明した。チアミンの添加を第1期前半に行った場合には、菌糸形成には影響は認められなかった。しかし第1期後半から第2時前半にチアミンを添加した場合には、その後の菌糸成長に明瞭な抑制が認められ、枝分かれした短い菌糸や酵母出芽が認められた。 以上の結果から、チアミンあるいはそれが細胞内でリン酸化されるチアミンリン酸が、この菌糸形成において信号調節物質として機能している可能性が示唆された。また、チアミン添加によって影響を受ける菌糸形成関連遺伝子群の存在も示唆された。
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[Publications] Suzuki T,Imanishi Y,Iwaguchi S-I & Kamihara T: "Depolarized cell growth precedes filamentation during the process of ethanol-induced pseudohyphal formation in the yeast Candida tropicalis." Microbiology. 144. 403-410 (1998)
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[Publications] 鈴木孝仁・今西由巳・岩口伸一・上原悌次郎: "Candida tropicalisの菌糸形成に特異的な遺伝子の検索" Journal of Medical Mycology. 39・2. 61-63 (1998)
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[Publications] Yano S,Inoue S,Nouchi R & Suzuki T: "Antifungal nickel(II)complexes derived from amino sugars against pathogenic yeast,Candida albicans" Journal of Inorganic Biochemistry. 69. 13-23 (1998)
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[Publications] Sugawara T,Tanaka A,Tanaka k,Nagai K,Suzuki K & Suzuki T: "YM-170320, a novel lipopeptide antibiotic inducing morphological change of colonies in a mutant of Candida tropicalis pK233." Journal of Antibiotics(Tokyo). 51・4. 435-438 (1998)