2000 Fiscal Year Annual Research Report
二形性(酵母型・菌系型変換)を制御する遺伝子群の解明
Project/Area Number |
10640650
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Research Institution | NARA WOMEN'S UNIVERSITY |
Principal Investigator |
鈴木 孝仁 奈良女子大学, 理学部, 教授 (60144135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上原 悌次郎 大阪体育大学, 体育学部, 教授 (90025982)
岩口 伸一 奈良女子大学, 理学部, 講師 (40263420)
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Keywords | 二形性酵母 / 菌系形成 / チロシン脱リン酸化酵素 / 遺伝子破壊 / エタノール / ケトコナゾール / MAPキナーゼカスケード / チアミン |
Research Abstract |
二形性酵母Candida tropicalisのエタノール添加培養において誘導される菌糸形成に特異的に発現する遺伝子群のうち、チロシン脱リン酸化酵素をコードするCtPP1についてその破壊株を作成した。エタノール添加培養において親株であるSU-2株(CtPP1/CtPP1)は二相性の成長曲線を示して菌糸形成を行うが、ヘテロ破壊株4-2(CtPP1/Δctpp1)及びホモ破壊株(Δctpp1/Δctpp1)は単相の成長曲線を示し、菌糸形成を行わなかった。エタノールに対する感受性は親株と変わりがなく、対数増殖期には細胞の長さが、エタノール無添加の対照培養に比べてへテロ破壊株4-2では2-3倍、ホモ破棄株4-4では数倍の長さに伸長していた。こうした現象は、エタノール添加培養の第一相で、本来は細胞の伸長にはたらくMAPキナーゼカスケードが、CtPP1pによって抑制されていると考えれば矛盾しない。またCtPP1野生株では、エタノール添加培養での菌糸形成に先立ってCtPP1pがはたらくことによって細胞の脱極性が起き、細胞伸長が抑制されることが菌糸形成に必須な段階であることを示唆している。 今回新たに、抗真菌剤ケトコナゾールを増殖阻害しない低濃度で添加した培養(ケトコナゾール培養)において菌糸形成が起こることを発見した。ケトコナゾール培養も二相性の成長曲線を示した。エタノール添加培養では、イノシトールや1Mソルビトール添加によって菌糸形成が抑制される。しかしながら、ケトコナゾール培養にこれらを添加しても菌糸形成は抑制されなかった。またCtPP1破壊株のケトコナゾール培養では菌糸形成が認められた。一方、第一相後期にチアミンを添加した場合には、エタノール添加培養と同様に、菌糸細胞の伸長の抑制と枝分かれの促進が見られた。 以上のことから、C.tropicalisの菌糸形成には、MAPキナーゼカスケードを経る信号伝達経路と、ケトコナゾールの関与するそれとは独立の経.路とがあり、それぞれの下流ではチアミンによる菌糸伸長の抑制がはたらく共通の作用点が存在することが示唆された。
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[Publications] S-I.Iwaguchi,T.Kanbe,T.Tohne,P.T.Magee,and T.Suzuki: "High-frequency occurrence of chromosome translocation in a mutant strain of Candida albicans by a suppressor mutation of ploidy shift."Yeast. 16. 411-422 (2000)
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[Publications] T.Suzuki,Y.Imanishi,S-I.Iwaguchi,and T.Kamihara: "An nmt1^+ homologue and its possible role in pseudohyphal growth of the yeast Candida tropicalis."Proceedings of the Tenth International Symposium on Yeasts : The Rising Power of Yeast in Science and lndustry.. 1. 23 (2000)
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[Publications] S-I.Iwaguchi,M.Sato,K.Makimura,P.T.Magee,and T.Suzuki: "Extensive chromosome translocation in a clinical isolate showing the distinctive carbohydrate assimilation profile from a Candidiasis patient."Yeast. 17(in press). (2001)
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[Publications] 今西由巳,岩口伸一,鈴木孝仁,上原悌次郎,横山耕治,西村和子: "Dynabeads oligo(dt)_<25>を用いたサブトラクション法によるCandida tropicalisの菌系形成に特異的な遺伝子の単離"日本医真菌学会雑誌. 42(accepted). (2001)
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[Publications] 鈴木孝仁: "フォトサイエンス生物図録"数研出版株式会社. 232 (2000)