1998 Fiscal Year Annual Research Report
戦前の官庁営繕組織所属の建築家-永瀬狂三と山田七五郎-の研究
Project/Area Number |
10650630
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
高嶋 猛 福井大学, 地域共同研究センター, 講師 (20115299)
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Keywords | 官庁営繕 / 永瀬狂三 / 山田七五郎 / 森田銀行 |
Research Abstract |
研究対象の建築家の内、今年度は山田七五郎の九州での活動、および福井県での作品を中心に研究を行った。 1. 九州での活動 福岡県立図書館、および長崎県立長崎図書館他の資料の調査により、九州での活動および長崎県の営繕組織とその中での山田七五郎の役割の概略を把握できた。明治36年(1903)の福岡医科大学創立工事監督補助嘱託期間は医科大学の開校(明治36年9月)の直前であった。明治38年から大正2年(1913)まで長崎県技師であり、着任した経緯は、長崎県議会での新県庁舎新築の際の専門家(技師)の招請要求を受け、明治37年に当時第3(長崎)高等商業嘱託となった山田七五郎の雇用となったものである。明治38年から明治42年までの第二課事務簿・土木課事務簿(長崎県立長崎図書館蔵)や県議会記録により、長崎県営繕組織での担当物件の入札から完成までの流れと職員動向が把握された。技師としては、県議会では参与員という立場で専門的な意見を述べる立場にあり、特に県庁舎の建築に対しては設計者辰野金吾の設計を忠実に実施する立場で予算の削減防止にも努めている。また、比較的大きな施設の竣工検査を行い、皇族が使用する施設の場合は、普段行わないような小さな建物の設計も行っている。さらに、組織維持のための金銭的な稟議には関与していない。すなわち事務的仕事は行わない高等技術官吏としての立場であったことが明確になった。 2. 福井での活動 福井では大正9年完成の旧森田銀行本店の復元工事に携わり詳細な設計手法や技術的側面の把握に努めた。また、調査により今まで不明であった設計依頼の経緯は、建築総司の取締役・横山吉十郎は進取の気概のあった人であること、森田銀行倉庫部が大正4年まで横浜支店を開設していたことからの依頼であること推定される。
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