1998 Fiscal Year Annual Research Report
超臨界流体中でのアルカンの官能基導入の為の遷移金属触媒反応
Project/Area Number |
10650835
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷口 裕樹 九州大学, 工学部, 助手 (50217139)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 二雄 九州大学, 工学部, 助教授 (00153122)
藤原 祐三 九州大学, 工学部, 教授 (10029481)
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Keywords | メタン / バナジウム / トリフルオロ酢酸 / 酢酸 / C-H結合活性化 / カルボキシル化反応 |
Research Abstract |
超臨界二酸化炭素は極性の無い反応媒体であるが,反応基質,触媒,酸化剤を強力に反応系中に拡散せしめることによって反応の効率を高めることが期待できる.超臨界流体中(二酸化炭素)でのアルカンの官能基導入のための遷移金属触媒の開発を目的として,本年度はまずモデル反応としてトリフルオロ酢酸溶媒中でのメタンの直接的なカルボキシル化反応から酢酸合成の検討を行った. 1) トリフルオロ酢酸溶媒中でのメタンの一酸化炭素によるカルボキシル化反応:メタン5気圧と一酸化炭素20気圧の混合ガスをトリフルオロ酢酸中で触媒量のバナジウムアセチルアセトナート[VO(acac)_2]及び酸化剤として過硫酸カリウム存在下に80℃,20時間反応させるとメタン基準95%収率で酢酸が生成する反応を見出した.更に本反応を詳しく検討した結果,反応溶媒を多く用いることで,メタン基準の収率は向上するものの,その際の活性化エネルギーから反応は拡散律速となっていることが判明した.また反応溶媒を少なくして反応を行うと,メタン基準の収率は低化するものの,高い活性化エネルギー値を示し,またCH_4/CD_4の同位体効果(k_H/k_D:2.9)から触媒がメタンのC-H結合を活性化する段階が律速段階であることが明らかになった.これらのことから,反応媒体として超臨界二酸化炭素を反応媒体として用いた場合,大きな効果が期待できる.更に,反応中間体に関して反応系中で触媒活性種としてVO(0C0CF_3)_3が生成していることを見出した.この錯体はトリフルオロ酢酸とVO(acac)_2を加熱撹拌するだけで合成することのできる新規な錯体である.従ってこの錯体を触媒として用いれば,溶媒としてトリフルオロ酢酸を用いること無く超臨界流体中でメタンの官能基導入反応を行うことができると期待できる. 2) 一酸化炭素を用いないメタンからの酢酸合成:上記1)の反応の検討を行った際,有毒な一酸化炭素をカルボニル源として用いること無く,メタン2分子からも酢酸が合成できることを見出した.本反応は上記反応よりも収率は低いが,^<13>CH_4を用いて反応を行うと,^<13>CH_3^<13>COOHが生成しカルボニル炭素までラベルされることが判明した.反応機構の詳細な検討を行った結果,反応ガス中に生成する一酸化炭素ガスの93%が^<13>COであることをGC-MS分析で明らかにした.またエタンの生成が確認できなかったことから,一旦メタンが反応系中で一酸化炭素に部分酸化された後,上記1)の反応で酢酸が生成したものであることを見出した.来年度はこの触媒[VO(OCOCF_3)_3]を用い,超臨界流体として二酸化炭素を用いて研究を行う予定である.
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