1998 Fiscal Year Annual Research Report
作物根圏土壌での亜酸化窒素生成に関与するアンモニア酸化菌群の解析
Project/Area Number |
10660061
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
横山 和平 香川大学, 農学部, 助教授 (10230658)
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Keywords | アンモニア酸化菌 / 根圏土壌 / 亜酸化窒素 |
Research Abstract |
作物根圏におけるアンモニア酸化菌による亜酸化窒素生成を制御することを目的とし、土壌中で活性なアンモニア酸化菌フローラの解析法を検討するとともに、植物根面・根圏土壌でのアンモニア酸化菌の活性と亜酸化窒素生成ポテンシャルについて基礎的研究を行った。 土壌中のアンモニア酸化菌のアンモニアモノオキシゲナーゼ遺伝子を特異的に高感度に検出するMPN/nested PCR法と、種あるいは属特異的DNAプローブによるハイブリダイゼーションを組み合わせ、アンモニア酸化菌フローラを迅速に解析する手法について検討した。有機物の少ない土壌では、MPN/nested PCR法による計数値は従来のMPN培養法で得た値と遜色無かったが、ハイブリダイゼーションの結果、高希釈段階でのみハイブリダイズシグナルが出現するといった結果が得られ、PCRの過程で偏った増幅が起こっていることが予想された。このため、全アンモニア酸化菌数の測定と、フローラの定性的な解析には現状で有効であるが、種あるいは属ごとの信頼のおける計数値は得られない場合があることが分かった。PCR条件等について引き続き検討が必要である。 アセチレンはアンモニア酸化菌のアンモニアモノオキシゲナーゼの自殺基質と知られている。そこで、蛍光色素にアセチレン残基を結合させたフルオレセインチオカルバモイルブロパギルアミン(FTCP)の活性特異的染色剤としての利用法を検討した。FTCPがアンモニア酸化菌を特異的に染色し、染色後の処理を工夫することにより蛍光を増強できることは確認できたが、アセチレン、ニトラピリン等アンモニアモノオキシゲナーゼの阻害剤で前処理し、亜硝酸生成が完全に停止した場合にもFTCPで染色された。このことから、FTCPのアセチレン残基がアンモニアモノオキシゲナーゼの自殺基質となるという既往の文献の知見に疑義が生じ、FTCPの活性特異的染色剤としての利用を断念せざるを得なかった。今後、DNAプローブを用いた蛍光in situハイブリダイゼーションを導入する必要がある。 好硝酸性植物として知られるホウレンソウを窒素多肥下で栽培し、根圏及び根域、非根圏土壌の亜硝酸生成活性を塩素酸阻害法で測定したところ、根圏でも非根圏と同レベルの活性が見られた。このことから、植物根圏では硝酸化成が抑制されるとの従来の知見が必ずしも一般的ではないことが明らかになった。今回の場合、窒素多肥によりアンモニア酸化菌と植物根との競合が無かったことが原因と考えられた。また、塩素酸阻害法で、脱窒を抑制しつつ、アンモニア酸化菌による亜酸化窒素の生成を選択的に測定できることを確認した。ホウレンソウ根、根圏及び非根圏土壌を用いて検討したところ、根圏・非根圏土壌からの生成速度は測定困難な場合が多かったが、ホウレンソウ根からは微弱ながら亜酸化窒素の生成が明らかに認められた上、ニトラピリン添加により半減したことから、アンモニア酸化菌によるものと推察された。今後、活性測定とフローラ解析を組み合わせ、植物根面での亜酸化窒素生成に関与するアンモニア酸化菌群を特定することが必要である。
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