1999 Fiscal Year Annual Research Report
景気後退期における花卉―特にラン―産業の経営戦略に関する研究
Project/Area Number |
10660206
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
津谷 好人 宇都宮大学, 農学部, 教授 (20107014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大泉 一貫 東北大学, 農学部, 助教授 (17733176)
石田 正昭 三重大学, 生物資源学部, 教授 (80144228)
木村 伸男 岩手大学, 農学部, 教授 (30260409)
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Keywords | カジュアルフラワー / 小鉢化 / 花市場 |
Research Abstract |
日本経済の長期にわたる景気後退の中で、他の農産物の大部が低迷しているにもかかわらず、花卉産業は全体的には依然として生産額を伸ばしている。これは不況による価格低落といった悪環境をむしろ逆手に取り新たな戦略を講じたからに他ならない。ただし分野別にみると、好景気時をリードしてきた高級花卉は厳しい状況を強いられ停滞ないし衰退しているのに対し、かわってカジュアルフラワー生産の伸びが顕著である。なお、花卉生産への参入は平成5年まで増加し続けたが、近年は、花卉農家数は14.6万戸で推移している。本研究で明らかにした点は以下のようである。 高級花卉の生産者・産地の対応は、(1)激しい競争のもとでごく少数に限定されてきているが、従来の高単価・高級品を維持している、(2)他の花卉類を導入し複合化をすすめている、(3)他の花卉類への完全な転換を図った、3タイプに分類できる。総じて、制度資金に支えられた重装備型の固定長期適合率の高い財務状況下の経営は前者の(1)、(2)タイプが多く、自己資本比率が高く資本装備率の低い経営は後者タイプがみられる。 高級鉢物については小鉢化傾向が著しい。シクラメンやランでは、業務需要の激減に伴い大鉢は高単価なきわめて売れ筋の悪い商品となったため、値ごろ感のある小鉢を経営の主力製品に置き換える生産者が多くなった。小鉢化による1鉢あたり原価の削減と販売数の拡大によって収益性を確保する戦略をとった。小鉢化によって、高級イメージを払拭し、カジュアル商品としての潜在需要を開拓した。この需要開拓は、ガーデニングブームや園芸療法ブームともあいまって、他の花の需要をも喚起した。なお、高齢化と少子化の進展により、業務用需要は、従来の結婚式用から葬儀用に大きく変わりつつある。 こうした需要の増大は、卸売市場における取引量の飛躍的増大をもたらしたが、同時に従来の花市場構造の脆弱性を露呈する結果になっている。特に切り花の場合、鮮度保持のため短時間で取引が終了する必要があるが、取引量の増大に伴いある程度市場の敷地面積は増大しているものの、相対的には駐車場に売り場面積が食われてきており、その結果、取引の種類が多いことや取引ロットが小さいことともあいまって、取引作業が非効率で長時間に及ぶという問題が発生している。こうした市場の近代化の問題は一定の地域性を伴って存在しているように思われる。 こうした理由から市場外取引、あるいは市場を通さない相対取引が増大している。市場外取引で注目されるのは、インターネットを利用した直売である。ここでは商品コンセプトは、単に花という素材だけにとどまらない。特に一定の規模の経営でロットを有する場合、量販店との契約も可能にしている。
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