Research Abstract |
本研究の目的は,適切な「生籾減圧乾燥法」を見出すことにある。理論的には,米粒周囲の空気を減圧することによって,含まれる水蒸気の分圧も降下するので,米粒水分に平衡する水蒸気圧力とのポテンシャルが大きくなり,乾燥速度が高まる。その反面,乾燥を終えて減圧から大気圧へ戻すさいに胴割れが発生すると考えられる。これを実際に検証するため,初年度の本実験では真空槽内の圧力として,大気圧の101kPaを基準(Control)に5,40,75kPa,温度を25,35,45℃,相対湿度を30,45,60,75%に各三つのパラメータを組み合わせた48種の乾燥条件を設定した。米粒は胴割れを正確に検出するため,ハロゲン光で粒内部をよく透視しうる玄米とした。初期水分は23.8%で,乾燥終期の水分を全実験区とも15%付近に合わせるようにした。 その結果,乾燥速度は5kPaで0.11〜10.39%/h,40kPaで0.07〜1.85%/h,75kPaで0.06〜1.84%/h,101kPaで0.04〜1.76/%hとなった。大気圧の101kPaから75と40kPaまでは大きな差でないが,5kPaになると急激に早まって,2.2〜5.9倍の速度となった。反面,表面胴割れは101kPaの18.0〜38.3%に対し,75kPaで約1.2倍の23.3〜44.0%、40kPaで約1.5倍の26.7〜58.0%,5kPaで約3倍の60.3〜87.3%となった。減圧を強めると明らかに表面胴割れが増加した。内部胴割れは101kPaの0〜1.3%に対し,75kPaで0.3〜1.3%,40kPaで0.7〜2.7%,5kPaで3.0〜7.0%となり,同様に減圧を強めるほど増加したが,高い発生率ではなかった。 次年度の検討課題として,特徴的な表面胴割れを抑制する方策を見出すことである。それには乾燥初期に減圧を強めて乾燥速度を速め,終期に至る前に徐々に大気圧へ戻して行く方法が考えられる。これは胴割れのことばかりでなく,エネルギ消費の節減にもなる。
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