1998 Fiscal Year Annual Research Report
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10660258
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大谷 元 信州大学, 農学部, 教授 (30109201)
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Keywords | 牛乳カゼイン / カゼインホスホペプチド / 免疫賦活 / 免疫グロブリン生産 / リンパ球増殖 / マイトージェン活性 / 特定保健用食品 |
Research Abstract |
「カゼインホスホペプチドの免疫賦活機能の解明」という課題のもとでの研究成果は、以下のように要約される。 (1) 牛乳αs1-カゼインのトリプシン消化物を対象に、免疫賦活ペプチドの検索を行い、ホスホセリン残基を4個含むαs1-カゼインの59-79域のペプチドを分離同定した。 (2) 分離ペプチドは、T及びBリンパ球の増殖を促進するとともに、それ自体もマイトージェン活性を有していた。また、分離ペプチドは免疫グロブリンの分泌を強く促進した。 (3) 分離ペプチドと共通した構造を持つ牛乳β-カゼインの1-25域のペプチドを調整し、脾臓リンパ球や腸管パイエル板リンパ球に対する作用を調べたところ、αs1-カゼインの59-79域のペプチドと同様の免疫促進活性があることが示された。 (4) 免疫賦活ペプチドとして同定した上述のペプチドはカゼインホスホペプチドである。カゼインホスホペプチドは従来からカルシウムの吸収促進を目的とした特定保健用食品素材として利用されている。そこで、市販のカゼインホスホペプチドについて、脾臓リンパ球や腸管パイエル板リンパ球に対する作用を調べたところ、分離ペプチドと同様の免疫促進活性があることが示された。 (5) カゼインホスホペプチドに各種プロテーゼやホスファターゼを作用させ、作用後のペプチドの免疫賦活活性を調べたところ、免疫賦活のための活性中心とカルシウムの吸収促進のための活性中心は同一であることが示された。 (6) カゼインホスホペプチドをマウスに経口投与することにより、腸管IgAの産生が顕著に高まることが示された。 以上のように、カゼインホスホペプチドはインビトロとインビボの双方において免疫賦活活性を有するとともに、その活性発現にはりん酸残基が重要であることを明らかにした。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] I.HATA, J.UEDA & H.OTANI: "Immunostimulatory action of a commercially available casein phosphopeptide preparation, CPP-III, in celi culture" Milchwissenschaft. 54(1). 3-7 (1999)
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[Publications] I.HATA, S.HIGASHIYAMA & H.OTANI: "Identification of a phosphopeptide in bovine asl-casein digest as a factor influencing proliferation and immunogloblin production in lymphocyte cultures" J.Dairy Res.65(4). 569-578 (1998)
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[Publications] H.OTANI & G.MIZUMOTO: "Suppresive effect of lysozymes and a-lactalubumins on mitogen-induced proliferative responses of mouse lymphocytes" Anim.Sci.Technol.65(11). 1029-1039 (1998)
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[Publications] 大谷 元: "病原性微生物に対する抗体を多量に含む生乳の生産と利用" ミルクサイエンス. 47(2). 63-75 (1998)
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[Publications] 大谷 元: "牛乳カゼイン由来のペプチドの栄養生理機能" ミルクサイエンス. 47(3). 183-193 (1998)
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[Publications] 大谷 元: "牛乳・乳製品のおいしさを左右する風味成分" 日本畜産学会北陸支部会報. 75. 2-8 (1998)
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[Publications] 大谷元(吉川正明他編): "ミルクの先端機能" 弘学出版, 276(24) (1998)
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[Publications] 大谷元(鈴木敦士他編): "食品成分シリーズ「タンパク質の科学」" 朝倉書店, 206(20) (1998)