1998 Fiscal Year Annual Research Report
家族性アルツハイマー病に連関した細胞死に拮抗する物質の研究
Project/Area Number |
10670097
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
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Keywords | 神経変性疾患 / アルツハイマー病 / 神経細胞死 / アミロイド前駆体 |
Research Abstract |
本年度はADRF(Alzheimer disease rescue factor)の同定を主として計画を実施した。ADRFは、既に確立した2つの神経細胞系(NK1細胞およびF11細胞)を用いて、家族性アルツハイマー病APP変異体による神経細胞死を阻止する物質として検索を進めている。研究代表者は斯様な拮抗物質の存在を既にウシ胎児血清中に確認しており、予備的検討によると10KDa前後のポリペプタイドであると考えられる。本研究では、まずウシ胎児血清を試料とし、複数のカラムクロマトグラフィー精製法を組み合わせることにより、家族性ア病APP神経細胞死系に拮抗する活性を指標としてADRFの部分精製を行った。さらにそれらからプロテテーゼ分解ペプチドを得て、エドマン分解法に基づいて同定したアミノ酸部分配列情報から、ADRF遺伝子のウシ大脳cDNAライブラリーからのクローニングを実施している。このウシADRFがクローニングされ次第、これをプローブとしたヒト,大脳cDNAライブラリーの解析を開始し、ヒトADRF遺伝子をクローニングする予定である。さらに、同定した遺伝子に基づいて作成する組み換えヒトADRFを用いて、これまでに確立した培養神経細胞系、および目下これらと平行して作成を試みている単一初代培養神経細胞での家族性ア病APP変異体による細胞死に対する拮抗作用を解析する。また、マウス大脳の各部位より単離した初代培養神経細胞系を用いて、ADRFに対する感受性とその差を検討する。一方、上記により同定した組換えADRFが、別のアルツハイマー病責任遺伝子であるプレシナリン1/2の誘導する神経細胞死に拮抗するか否かを解析し、ア病間での神経変性機構の共通性と特殊性を検討し、同時にADRFが、APP変異体の関与するア病にのみ有効なのか、あるいは他のア病にも有効なのかを解明する。
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